
岩手県の農協の経営が危機にひんしている。金利の上昇によって価格が下落した国債の“損切り”を迫られたり、農家から集めたコメの値段が下がって農業関連事業が減益になったりして赤字に転落した他県の農協の後を追うように、経営の悪化が見込まれているのだ。長期連載『儲かる農業 JA・豪農・アグリビジネス大激変』内の特集『全国455JA“赤字&消滅”危険度ランキング【26年版】 金利上昇とコメ暴落で大淘汰!?』の本稿では、岩手県において、債券とコメの暴落ショックに耐えられない可能性が高い農協を、独自試算であぶり出した。試算の結果、県内の過半の農協が赤字に転落するという厳しい実態が判明した。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文、データ分析 小海敬義)
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債券の運用失敗で47億円の損失を出したJAも…
東北のある農協は、米価下落で1億円の減益
金利の上昇に伴って暴落した長期国債の“損切り”を迫られ、赤字に転落する農協が全国で続出している。
2024年度には、債券の“損切り”を行って、内部留保が大幅に減少する農協が続出した。愛媛県のJAおちいまばりは有価証券の売却損を48.5億円計上(利益剰余金は前年度比77%減)、JA高知市は同43.2億円計上(同91%減)などだ。
25年度においても、複数の農協が同様の理由で巨額赤字に陥っている。
JA秋田しんせいは今年2~3月、組合員を対象にした説明会で25年度、14億6500万円の当期損失に陥る見通しを示した(前年度は連結で3億8162万円の黒字)。赤字の要因としては、(1)有価証券の売却損を約12億円計上したこと(2)25年産米の販売状況が悪く、3000万円の黒字を見込んでいた営農経済事業が、7000万円の赤字になりそうなこと――の2点を挙げた。
農協の組合員を不安にさせる説明はそれだけではなかった。JA秋田しんせいは損益シミュレーションを行った結果、5年後の30年度に1億1580万円の赤字になる見通しを示したのだ。26年度から実に3億6946万円の減益だ(同農協が説明会で示した赤字転落を回避するための施策などの詳細は『【北海道】JA“赤字&消滅”危険度ランキング!農協間で大きな経営力格差、道内でも都市部は要注意…国債暴落ショックに耐えられないハイリスクJAを独自試算で解明』参照)。
同一県内の農協が合併して誕生した大型農協においても損失が発生している。JA徳島県は25年度上期に約47億円の有価証券の売却損を計上。通期決算で巨額赤字に沈む見込みだ。
このように、保有国債の暴落や、農家から集めたコメの値下がりによって存続の危機に陥る農協が増えている。減益ショックに耐えるための基礎体力がない農協を明らかにするため、ダイヤモンド編集部は、農協ごとの信用事業(銀行業務)、共済(保険)事業などの減益額や人件費の増加額を独自にシミュレーションした(経営の悪化が懸念される全国ワースト30JAについては『【JA“赤字&消滅”危険度ランキング・ワースト30】金融事業の縮小で1970億円の減益に!金利上昇とコメ暴落ショックに耐えられない「ハイリスクな農協」を独自試算で解明』参照)。
次ページでは、減益による経営へのインパクトが大きい農協をリストアップした「JA“赤字&消滅”危険度ランキング岩手編」を公開するとともに、同県内のハイリスク農協の経営を徹底分析する。試算の結果、岩手県の7JA中4JAが赤字に転落するという厳しい実態が分かった。
過去には、経営が悪化して近隣の農協に救済合併されたり、組合員の出資金を1口分1000円まで大幅に減額したりした農協が存在し、いずれのケースでも出資者や取引先に多大な悪影響を及ぼした。農協ごとのリスクの算定方法を、経営環境の変化に応じて刷新した結果、明らかになった“消滅危機”農協はどこか。
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