全国455JA“赤字&消滅”危険度ランキング【26年版】 金利上昇とコメ暴落で大淘汰!?#1

農協の経営が危機にひんしている。金利の上昇によって価格が下落した国債の“損切り”を迫られたり、農家から集めたコメの値段が下がって農業関連事業が減益になったりして、赤字に転落する農協が相次いでいるのだ。長期連載『儲かる農業 JA・豪農・アグリビジネス大激変』内の特集『全国455JA“赤字&消滅”危険度ランキング【26年版】 金利上昇とコメ暴落で大淘汰!?』の本稿では、債券とコメの暴落ショックに耐えられない可能性が高い農協を、独自試算であぶり出す。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文、データ分析 小海敬義)

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債券の運用失敗で25年度、47億円の損失を出したJAも…
コメ産地の農協は、米価下落で1億円の減益

 金利の上昇に伴って長期国債の価格が暴落したことで、農協の組合長から悲鳴が上がっている。

「高市早苗政権が発足して以降、国債の暴落が起きている。積極財政の実行は日本の財政に対する不安をあおり、国債の評価は急落した。国債の金利は、10年国債で10月末1.65%が3カ月後の1月末で2.24%まで35%近く上昇し、金利の低い既発国債の評価損は急拡大、当JAでは1.34倍になった。JAグループ全体においても、今期の決算で、国債の評価損により出資配当制限を受け配当を断念したり、50%棄損した国債の強制減損を強いられるJAが続出している」

 上記は、JAcom(「農業協同組合新聞」のウェブメディア)が5月20日に掲載した、茨城県のJA常陸の秋山豊組合長による寄稿文の一節だ。債券の含み損の拡大に対して、農協のトップが強い危機感を抱いていることが分かる。

 実際、2024年度には、債券の“損切り”を行って、内部留保が大幅に減少する農協が続出した。愛媛県のJAおちいまばりは有価証券の売却損を48.5億円計上(利益剰余金は前年度比77%減)、JA高知市は同43.2億円計上(同91%減)、JAみやぎ登米は同37.6億円計上(同79%減)などだ(詳細は『【国債の「巨額損失リスク」農協ランキング完全版・ワースト455JA】有価証券の売却損で、内部留保が激減しかねない“危険水域”の42農協を一挙公開!』参照)。

 24年度に続き、25年度においても、複数の農協が同様の理由で巨額赤字に陥っている。

 JA秋田しんせいは今年3月、組合員向けの説明会で25年度、有価証券の売却損を約12億円計上し、約14億6500万円の当期損失に陥る見通しを示した(前年度は連結で3億8162万円の黒字)。

 赤字の要因は国債の損切りだけではない。説明会資料によれば、JA秋田しんせいは25年度、営農経済事業で3000万円の黒字を見込んでいたが、利益予想を下方修正し、7000万円の赤字を見込む。1億円の減益となる要因として同資料は、「需給の緩みから25年産米の販売進度が鈍化し収益が減少」したことなどを挙げた。

 農協の組合員を不安にさせる要因はそれだけではなかった。以下は、JA秋田しんせいが示した5年後の損益シミュレーションだ。

JA秋田しんせいが2~3月に行った組合員を対象にした説明会で示した5年後の損益シミュレーションPhoto by Hirobumi Senbongi 拡大画像表示

 JA秋田しんせいはシミュレーションで、5年後の30年度に1億1580万円の赤字になる見通しを示した。26年度から実に3億6946万円の減益である。赤字転落を避けるための対策として同資料では、「貯金・年金の推進により調達を確保」することや「農業・くらしへの貸出に注力」することを示唆したが、その“具体策”は次期中期経営計画で「検討します」としてお茶を濁している。

 JA秋田しんせいのような中規模の農協だけでなく、同一県内の農協が合併して誕生した大型農協においても巨額損失が発生している。JA徳島県は25年度上期に約47億円の有価証券の売却損を計上。通期決算で巨額赤字に沈む見込みだ。

 このように、保有国債の暴落や、農家から集めたコメの値下がりによって存亡の危機に陥る農協が増えている。減益ショックに耐えるための基礎体力がない農協を明らかにするため、ダイヤモンド編集部は、農協ごとの信用事業(銀行業務)、共済(保険)事業などの減益額や人件費の増加額を独自にシミュレーションした。すると、全国の490JA中、200JAが5年後に赤字に転落するという衝撃的な結果が出た。

 次ページでは、減益による経営へのインパクトが大きい農協をリストアップした「JA“赤字&消滅”危険度ランキング・ワースト30」を公開するとともに、ハイリスク農協の経営を徹底分析する。また、全農協で合計1969億円に上る減益要因も明らかにする。

 過去には、経営が悪化して近隣の農協に救済合併されたり、組合員の出資金を1口分1000円まで大幅に減額したりした農協が存在し、いずれのケースでも出資者や取引先に多大な悪影響を及ぼした。農協ごとのリスクの算定方法を、経営環境の変化に応じて刷新した結果、明らかになった“消滅危機”農協はどこか。