「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

みるみる「話がうまい人」になれる、最高の比喩・ベスト1

「話がうまい人」になれる最高の比喩

 話がうまい人には共通点があります。
 それは、難しいことを難しいまま話さないことです。

 相手がイメージできるものに置き換える。
 見えないものを見えるようにする。
 その技術があるから、「なるほど!」と言われるのです。

言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その代表例として「蚊柱(かばしら)」という比喩が紹介されています。

 実は、この比喩の考え方を理解すると、説明力は一気に上がります。

物価は「蚊柱」である

 本書では、こんな一節が紹介されています。

経済学者の渡辺努の『物価とは何か』は、「物価は『蚊柱』である」という言葉からはじまります。
蚊柱とは、夏に川沿いを歩いているときなどに遭遇するユスリカの群れのことです。
「世の中に何十万と存在する個別の商品それぞれが、一匹一匹の蚊にあたるというわけです。(中略)そうした商品の群れから少し距離をとって眺めると、群れ全体が見えてきます。ちょうど蚊柱というひとつの物体があるように。これが物価です。」(『物価とは何か』p.3より)
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

「物価」という言葉は抽象的です。

 誰も物価そのものを見たことはありません。
 しかし、「蚊柱」と言われると急にイメージできます

 一匹一匹の蚊は見える。その集合体として蚊柱がある。
 同じように、一つひとつの商品価格の集まりが物価なのだ。

 難しい概念が、一気に目に見えるようになるのです。

抽象語はすべて「蚊柱」だと考える

 本書では、さらにこう続きます。

この比喩は、岩井克人の『マクロ経済学の「蚊柱」理論』というエッセイから取ったもので、岩井克人は経済全体を蚊柱にたとえています。
私は思い切って、「パッとイメージできない言葉はすべて蚊柱」と言いたいです。
パッとイメージできない言葉は、部分に切り分けないと見えるようになりません。
見える部分にまで切り分けたら、今度はそのすべてを寄せ集めて蚊柱をつくる。
これが、全体のイメージになるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは説明の本質を突いています。

 たとえば、「経営」「リーダーシップ」「ブランド」「組織文化」…。
 こうした言葉は、そのままでは見えません。

 だから話が伝わらない。そこで、まず分解する

 経営なら、採用、営業、商品開発、財務。
 リーダーシップなら、目標設定、評価、意思決定、育成。
 そうやって見えるレベルまで分ける

 そして最後に全体像としてまとめ直す。
 この作業こそが、優れた説明なのです

話がうまい人は、見えないものを見えるものに変えている

 本書では最後にこう語られています。

「経済」という言葉も切り分ければ、世界中の人々の活動になります。
こうやって部分を集合させていくと「経済」をパッと見える形にできるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここに、話がうまい人の秘密があります。
 彼らは難しい言葉を使うのが上手なのではありません。
 見えない言葉を、見える形に変えるのが上手なのです

「顧客満足度」と言う代わりに、実際のお客様の姿を語る。
「企業文化」と言う代わりに、社員の日常行動を語る。
「信頼」と言う代わりに、具体的な出来事を語る。

 だから、相手の頭の中に映像が浮かぶ。だから、伝わるのです。

説明の達人は、いつも「蚊柱」を探している

言語化だけじゃ伝わんない』は、説明の技術をとてもわかりやすく教えてくれます。

 話が下手な人は、抽象語をそのまま投げます
 話がうまい人は、その言葉をいったん分解します
 そして、相手が見える形に組み直す。
 つまり、「蚊柱」を見せているのです。

 もし説明がうまくなりたいなら、何か難しい言葉に出会ったときに考えてみてください。

「これは何匹の蚊でできているのだろう?」

 その問いを持つだけで、話は驚くほどわかりやすくなるはずです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。