「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

知ったかぶりする「頭の悪い人」
「それ、知ってるよ」
そう言いながら、実はまったく理解していない人がいます。
しかも本人は、本気で理解しているつもりです。
だから厄介です。
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その原因について、「言葉と経験を混同しているからだ」と語られています。
知識があることと、理解していることは違う。
その違いを見落とした瞬間、人は“知ったかぶり”になってしまうのです。
人は「言葉」だけで理解した気になれる
本書では、まずこんな説明がされています。
囲まれているものが「中身」で、その「中身」を箱に詰めて、外側にラベルを貼る。
そんな状態です。
ラベルと中身は人によってちがいます。
人によって、「言葉の理解の仕方がちがう」ということです。
そして、この差を分けるのが「経験」です。
理解を2つに分けたときの1つ目。
ふわっとした理解とは、箱の中身を確認していない状態です。
そして、地に足のついた理解とは、箱の中身とラベルを両方確認した状態です。
箱の中身を知らなくても、私たちは言葉を使うことができます。
言葉には定義というものがあるからです。
定義とは、1つのラベルを、別のラベルで説明し直すことです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
人は、言葉の説明を覚えるだけで、「理解した」と思えてしまう。
だから、本を読んだだけで賢くなった気になる。
YouTubeを見ただけで専門家になった気になる。
しかし、それはまだ「ラベル」を知っただけなのです。
「定義を言えること」と「理解していること」は違う
本書では、さらにこう続きます。
「うどん」を『小麦を練ってつくった白い麺』と定義したとします。
これは、「うどん」というラベルを、「小麦」や「練る」「白い」「麺」という別のラベルを使って説明し直しているのです。
ただ、問題は1回も中身を確認していないことです。
「うどん」の箱の中身もなければ、「小麦」の箱にも中身がないかもしれない。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、仕事の現場でもよく見かける光景です。
「リーダーシップとは何か?」
「マーケティングとは何か?」
「戦略とは何か?」
そう聞かれて、立派な定義を答えられる人がいます。
しかし、その人が実際にチームを率いたこともなければ、商品を売ったこともなければ、戦略を実行したこともない。
すると、その理解はどこまでも“言葉の上”だけのものになってしまう。
つまり、ラベルを別のラベルで説明しているだけなのです。
本当に頭の悪い人は「知っている」と思い込む
本書では、最後にこう語られています。
ふつう、定義を語れない人は言葉の意味をわかっていない人だと思われます。
でも、定義を語れても、箱の中身が空っぽの場合があるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここに、知ったかぶりの本質があります。
本当に頭の悪い人は、知らないことではなく、「知っていると思い込むこと」です。
なぜなら、その瞬間に学ぶことをやめるからです。
「わかっている」
「知っている」
「聞いたことがある」
そう思った途端、人は箱の中身を見ようとしなくなる。経験しようとしなくなる。観察しようとしなくなる。
だから成長も止まってしまうのです。
賢い人ほど「まだわかっていない」と考える
『言語化だけじゃ伝わんない』は、「理解」の怖さを教えてくれる本です。
言葉を知ることは大切です。
定義を学ぶことも大切です。
ですが、それだけでは足りない。
本当に理解したと言えるのは、その言葉の“中身”を見たときです。
実際にやってみる。失敗してみる。観察してみる。経験してみる。
そうやって初めて、ラベルと中身が結びつく。
だから賢い人ほど、「知っている」とは簡単に言いません。むしろ、
「言葉は知っているけど、まだ経験していない」
「説明はできるけど、本当に理解しているかはわからない」
と考える。その謙虚さこそが、本当の知性なのかもしれません。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








