親世代よりコミュニケーション能力が高いはずの私たちが、なぜパートナーとうまくいかず、別れを選ぶ人さえ多いのか。その理由と、冷めた愛を取り戻すヒントを示すのが『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』だ。本書を読めば心から満たされる関係を築く視点が手に入るだろう。本連載では、本書の内容から、男女の違いをお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
愛はなぜ冷めるのか
あるセミナーで「親が離婚せず仲良く暮らしている人は?」と尋ねると、約半数が手を挙げる。
ところが「自分は親より男女関係のスキルが優れていると思う人は?」と聞くと、ほぼ全員が手を挙げるという。
スキルが高いはずなのに、なぜ多くのカップルがうまくいかないのか。本書はこの素朴な疑問から出発する。
仕事や通勤の時間は延び、共働きの家庭も増えた。スマホやネットの普及で、面と向かって触れ合う時間はむしろ減っている。
その結果、私たちは忙しさに追われ、相手を気遣う余力を失っている。著者は、もう役割だけでは足りない時代になったと指摘する。
2種類の夫婦の形
本書は、夫婦の関係を二つに分けて説明する。
一つは「ロールメイト」、つまり役割でつながる関係だ。
男が外で働き、女が家で子育てをする。衣食住と安全を守ることが目的で、相手を選ぶ基準も「役割を果たせるか」だった。親や祖父母の世代に多い形である。
もう一つが「ソウルメイト」、すなわち魂でつながる関係だ。
お互いが嘘偽りなく自分を表現でき、心から満たされる。今の男女が本当に求めているのは、こちらだと著者は言う。
なぜ求めるものが変わったのか。
これは女性が高い教育を受け、経済的に自立したことが大きい。
食べ物や安全のために相手へ頼る必要がなくなり、人はもっと高い望みを抱くようになった。
これを説明するのが、アメリカの著名な心理学者アブラハム・マズローだ。マズローは、人間の欲求には段階があるとする「欲求段階説」を唱えた。
食べ物や安全のために男を必要としなくなった女性も、一家の唯一の稼ぎ手ではなくなった男性も、人間の基本的な欲求を満たすだけでは満足できず、心の充足や愛、自己表現といった高次の欲求を持つようになった。(『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』より)
心を満たす関係へ
では、どうすればソウルメイトになれるのか。
本書が示す出発点は、相手の心を明るく照らそうとする姿勢である。
あるカウンセリングでは、夫の稼ぎは良いのに「ルームメイトみたいで愛されている実感がない」と訴える妻が登場する。問題はお金ではなく、心が満たされないことだった。
現代のカップルが、世の中の変化によって生じたストレスを減らすためのもっとも効果的な方法は、心を豊かにするソウルメイトになることなのだ。(『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』より)
ストレスにさらされると、人は目の前の行動の意味を見失う。働くのは愛する人のためなのに、それを忘れ、情熱は静かに冷めていく。
だからこそ、忙しい日々でも相手への関心を言葉と態度で示すことが、何よりの薬になる。
感謝の一言を伝え合うだけでも、二人の温度は変わっていくだろう。
大切なのは、相手を変えることではなく、自分から心を開くことだ。本書は、その小さな一歩こそが関係を育てると教えてくれる。
子は親を見て育つ
この話は夫婦だけのものではない。冒頭のセミナーが示すように、私たちは親の関係を一つの手本として育つからだ。
仲の良い両親のもとで育った子は、人と心を通わせるお手本を日々受け取っているのかもしれない。逆に冷えた家庭では、その手本を得にくいだろう。
だとすれば、親が役割をこなすだけでなく、互いを思いやる姿を見せることは、子への何よりの贈り物になるのではないだろうか。完璧な夫婦である必要はない。
ぶつかっても歩み寄る姿、ありがとうと言い合う姿。そうした日常の積み重ねが、子どもの将来の人間関係を静かに支えていくのだろう。




