共働きが当たり前になり、家事や育児を分担するカップルが増えた。なのに、なぜか夫婦の会話がかみ合わない、恋愛感情が以前より薄れた気がする――そんな違和感を抱いている人は多いはずだ。その違和感の正体を、男女関係のベストセラー『ベスト・パートナーになるために』の著者ジョン・グレイ博士が25年ぶりに書き下ろした続編『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』が鮮やかに解き明かしている。本連載では、本書の内容から、男女の違いをお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

夫婦の背中Photo: Adobe Stock

役割の自由が生んだ新しい悩み

 現代の私たちは、男女の役割に縛られない自由な社会に生きている。女性がバリバリ働き、男性が子育てをすることも珍しくなくなった。

 ところが、この自由な時代になってから、カップルのあいだに新しい悩みが生まれている。「支え合っているのに恋愛感情が冷めていく」という悩みだ。

 本書には、弁護士として忙しく働く妻ジョアンと、パートタイムで働きながら子育てを担う夫ジャックのエピソードが登場する。ふたりは互いに支え合う理想的な夫婦に見える。だが、夫のジャックは妻について、こうこぼしている。

ジョアンは帰宅しても忙しくしていて話をしようとしません。話をするときは、男のようにすぐに答えを探そうとします。その日の出来事をただ分かち合おうとはしないのです。(『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』より)

 妻は家に帰ると自室にこもってパソコンで仕事を続ける。一方の夫は、その日の出来事を妻に聞いてほしくてうずうずしている。従来の“話したい女/一人になりたい男”という構図が、逆転してしまっているのだ。

ホルモンで決まる「らしさ」の正体

 なぜこんな逆転現象が起きるのか。著者は、その答えを「ホルモン」に求めている。

 日中にどんな仕事をしているかで、体内で分泌されるホルモンは変わる。

 弁護士や肉体労働のような競争的な仕事をすると、男女ともに男性ホルモン(テストステロン)が増えやすい。一方、保育士や看護師、家で子どもの世話をするような人を支える仕事をすると、男女ともに女性ホルモン(エストロゲン)が増えやすい。

 テストステロンとは、ざっくり言えば「闘うためのホルモン」。エストロゲンは「つながるためのホルモン」だ。

 つまり、外でバリバリ働く妻ジョアンの体内では男性ホルモンが優位になり、家で子育てをしている夫ジャックの体内では女性ホルモンが優位になっている。

 帰宅後のふたりが伝統的な役割が入れ替わったような行動をとってしまうのは、そのためなのだ。

 本書は、ここで重要な指摘をしている。

カップルが恋愛感情を失ってしまう大きな理由は、男らしさと女らしさのバランスをとることの重要性とその実現方法を知らないことだ。(『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』より)

帰宅後こそバランスを取り戻す時間

 では、どうすればいいのか。

 著者が提案するのは、日中に偏ったホルモンバランスを帰宅後のパートナーとの時間で意識的に整え直すという発想だ。

 職場で男性的な行動を求められている女性は、家に帰ったらあえて女らしさを取り戻す時間を持つ。自分の殻にこもるのではなく、パートナーに今日あった出来事や今の気持ちを話してみる。

 そうするとエストロゲンの分泌が促され、ストレスが和らぎやすくなる。

 逆に、日中ずっと子どもの世話や人のサポートに追われていた男性は、家に帰ったら「洞窟タイム」と呼ばれる一人の時間を確保するとよい。

 そのうえで、パートナーの話にじっくり耳を傾ける。これでテストステロンが回復し、男らしさを取り戻しやすくなるというわけだ。

 大事なのは、従来の「男は外、女は内」という古い役割に戻ることではない。著者はあくまで、生物学的な違いを受け入れたうえで、お互いの事情に合わせてニーズを理解し合うことが大切なのだと述べているのだ。

違いを知ることが愛情の入り口になる

 この考え方は、子育て中の家庭にも応用できるかもしれない。

 たとえば、フルタイムで働いて帰宅した母親が、すぐに子どもや夫の世話モードに入れないのは、決して愛情が足りないからではないのだろう。体内のホルモンが、まだ「仕事モード」のまま残っているだけかもしれないのだ。

 同じように、育児に追われている父親がときどき一人の時間を欲しがるのも、わがままや逃げではなく、男らしさのバランスを取り戻すための自然な反応だと考えられる。こうした視点を家族で共有できれば、相手の態度にイライラする回数は減っていくはずだ。

 男女の違いを、敵対するものではなく互いを惹きつける磁石の両極としてとらえ直す。それだけで、夫婦の会話の意味も、相手の沈黙の意味も、まったく違って見えてくるに違いない。