25年の時を経て、名著『ベスト・パートナーになるために』待望の続編『一人になりたい男、話を聞いてほしい女』が8月30日に刊行されました。家庭、職場、恋愛……あらゆる場面で異性間コミュニケーションは必須です。男女が上手に付き合うために必要なことを生物学的に、あるいはコミュニケーションの観点から考え続けてきたグレイ博士の最新の考えを同書から紹介していきます。

「男らしさ」「女らしさ」は
現代では通用しない

現代の男女は求められる役割が変わり、古い価値観から解放され、男性的、女性的な特性を自分のなかに受け入れるようになった。以前と比べて男はキャリア志向の女性をサポートするようになったし、女は金を稼ぐよりも自分らしく生きることに価値を見いだす男性に理解を示すようになった。

男女が経済状況や年齢などに応じて役割を柔軟に担えるようになったことは、私たちの脳や身体にも影響を及ぼしている。最新の研究によって、人の日中の行動が脳を変化させ、それに応じて体内でさまざまなホルモンの分泌が促されることがわかっている。

肉体労働や弁護士などの従来は男性が担ってきた仕事をすると、男女ともに男性ホルモンであるテストステロンの分泌が刺激されやすい。一方、保育士や看護師などの従来は女性が担ってきた仕事をすると、男女ともに女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が刺激されやすくなる。その結果、女性が伝統的な男性の役割を担うと家庭では火星人の傾向が、男性が伝統的な女性の役割を担うと家庭では金星人の傾向が見られるようになる。

だが男性的な仕事をしている女性は、男性ホルモンと女性ホルモンの健全なバランスをとるために家庭では女性らしさを表現すべきだ。このバランスがうまくとれなければ、退屈や不満、空虚さ、不安などを感じやすくなる。

同じく、日中は誰かの世話をするような女性らしい活動をしている男性は、パートナーとの関係では男らしさを表現することがホルモンのバランスを保つために重要になる。

カップルが恋愛感情を失ってしまう大きな理由は、男らしさと女らしさのバランスをとることの重要性とその実現方法を知らないことだ。男性が男らしさを、女性が女らしさを抑えていると、ふたりの関係には退屈や不安が生じ、情熱が奪われやすくなる。男は柔和で感情的になりすぎ、女はきつく冷たくなりすぎてしまう。男のエネルギーレベルは低くなり、仕事に追われている女は落ち着かなくなる。以降の章では、こうした抑圧がもたらすさまざまな症状と、健全な男らしさ、女らしさのバランスを回復させる方法を説明していく。

適切なホルモンバランスを見つける方法

男らしさと女らしさのバランスは意識していないととりづらい。
女性だが男性的な仕事をしているジョアンは、帰宅すると洞穴に籠もろうとする(火星人の傾向)。男性だが女性的な活動をしているジャックは、話をしたいと思っている(金星人の傾向)。一日の仕事を終え、ジャックとジョアンはどちらも気分が良くなることをしようとしている。だが、それが最終的にふたりにとって良いものになるとは限らない。

私たちは無意識に、パートナーとの関係を悪化させる行動をとっているのだ。
帰宅したジョアンは、自分の殻にこもったりせず、今の気持ちをパートナーと分かち合うことの方がリラックスできるし、心も切り替えやすい。

ジャックもバランスをとるために、日中は抑えていた男らしさを取り戻すための時間が必要だ。帰宅した妻には、子育てをして過ごした一日の出来事を話したいと思う。だがまずは洞窟タイムをつくったり、ジョアンの話に耳を澄ませたりすることの方が、男らしさと女らしさのバランスをとりやすくなる。男性がしゃべりすぎると、カップルの恋愛感情が薄れやすくなることがあるのだ。