焼酎を居酒屋で注文するときやスーパーで購入するとき、鹿児島の芋焼酎や大分の麦焼酎というように少なくとも生産県や原料別に指定するのがふつうです。焼酎党ならもっと細分化して、薩摩酒造の「さつま白波」、霧島酒造の「黒霧島」、三和酒類の「いいちこ」といった特定の生産者の特定の銘柄を指定するものです。それらには、しっかりとしたブランドがそれぞれ確立しています。
そうした優れたブランドのラベルの横(あるいは下)に「九州」と表示することでどんなプラス効果があるのでしょうか。商品イメージがよくなるとか、親しみが湧いてくるとか、よりおいしく見えるとか、といったことはまったく考えられません。ひょっとしたら、マイナスの影響のほうがあるかもしれません。
「九州焼酎」と聞くと、九州の平均的なレベルの焼酎というイメージが強くなり、それぞれの銘柄が持っている特徴や個性を損なってしまいそうです。また、「九州焼酎」という余計な情報が「黒霧島」という大切な情報を弱める作用を起こすことも考えられます。
ワインの世界には
厳格な原産地呼称制度がある
ワイン通の友人からおもしろい話を聞きました。
「ワインの世界では、オールドワールドの原産地呼称制度が厳格に定められている。『ロマネコンティ』を『ブルゴーニュワイン』と一緒くたには絶対にしない」
文中の「オールドワールド」というのは、数千年におよぶワインづくりの歴史を持つ伝統ある国のことを言います。主にヨーロッパの国々のことで、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、ポルトガル、オーストリアなどを指します。
オールドワールドと呼ばれるワイン生産国にはいくつかの特徴があります。まず、かたくなに守り続けている伝統的な生産スタイルでワインがつくられていることです。そして、各国独自のワイン法がルールとして存在することです。そのルールは、国ごとだけでなくEU全体でも決められています。もうひとつ、ワインの生産地によってきっちりと格付けが制定されていることです。
九州にも地域ブランドとして広く知られている観光地が少なくありません。
『夢みる勇気』(唐池恒二、リベラル社)
「由布院温泉」「黒川温泉」「阿蘇」「桜島」「雲仙」といった全国区のブランドがしのぎを削っていますし、世界遺産の「屋久島」「宗像大社」「奄美大島」などは全国区というよりもう地球区です。地域ブランドは観光地や観光施設だけではありません。福岡の「八女茶」、大分の「関あじ」、熊本の「い草」など、地域の特産品も地域ブランドとして確立しています。今や海外の人たちからも愛され親しまれている「くまモン」は、地域ブランドの世界的なトップスターと言っていいでしょう。
ここで、声を大にして言います。「九州」というブランドは認められていません。また、今からつくろうと思ってもつくれるものでもありません。「九州」は、いろいろなものが詰め込まれている総称に過ぎないからです。ひとつの言葉、ひとつのイメージでは表現できないのです。
【3秒アドバイス】
もちろん大きなブランドには信用や安心があります。ただ、やり方によっては、小さいからこそ勝てるのがブランド。成功のヒントは「コンセプトを明確にして徹底」することと、著者は言います。







