Photo by Yuito Tanaka, JIJI
りそなホールディングスとJR西日本の資本業務提携を機に、「金融×鉄道」の連携が新たな局面に入った。JR東日本は楽天銀行と「JRE BANK」を立ち上げたが、JR西日本が目を付けたのは、関西みらい銀行が持つリアルな顧客接点だった。他のJR各社も金融事業に踏み込む可能性はあるのか。長期連載『金融インサイド』の本稿では、JR各社の社長・幹部らへの取材と、金利のある世界で加速する地銀再編の動向を基に、JR東海やJR九州が金融事業に参入する現実味を検証。JR各社の首脳が銀行参入を現実的な選択肢として探っている実態が浮かび上がった。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔、永吉泰貴)
JR西日本は銀行のリアル店舗も重視
JR各社の首脳が語った“金融参入”の意欲
銀行と鉄道会社の距離が、急速に縮まっている。
5月1日、りそなホールディングス(HD)と西日本旅客鉄道(JR西日本)は資本業務提携を締結した。JR西日本は、りそなHD傘下の関西みらい銀行の株式20%を取得する。りそなHDはBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)機能を提供し、2027年度中に新たな銀行サービス「WESTERミライバンク」(仮称)を立ち上げる方針だ。決済、送金、チャージなどを一つのアプリで使える「おさいふWESTERプロジェクト」も進める。
JRの金融事業参入で先行したのは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が24年5月に楽天銀行と始めた「JRE BANK」だ。
ただし業界内では、首都圏に圧倒的な顧客基盤を持つJR東日本に限った事例との見方が根強かった。規制対応や運営負荷の大きい金融事業は、他のJR各社にはハードルが高いとみられていたためだ。
ところが、JR西日本の参入によってこの見方は変わりつつある。しかも提携相手は、楽天銀行のようなネット銀行ではない。地方銀行の関西みらい銀行を傘下に持つ、りそなHDだ。
JR西日本の倉坂昇治社長は、りそなHDを選んだ理由について「われわれにとって関西は最も重要な基盤だ。関西みらい銀行は大阪や滋賀に多くのリアル店舗を持ち、不動産を含めて多様な相談ができる安心感がある」と語る。
もう一つ評価したのが、りそなグループが持つ中堅・中小企業との接点の厚さだ。「りそなHDは中規模企業のメインバンク先が多く、法人メインバンク先の数では3メガバンクの一角を上回る。われわれのコード決済事業は、中小企業の決済をより安価で便利にするビジネスモデルとして進めており、りそなHDとの連携は有効に機能すると判断した」(倉坂社長)。
つまりJR各社が金融事業に踏み切る際のパートナーとして、ネット銀行やメガバンクだけでなく、地場に豊富な顧客接点を持つ地域金融グループも有力な選択肢になっているのである。
この動きは他のJR各社にも広がるのか。ダイヤモンド編集部は、JR東日本とJR西日本に加え、東海旅客鉄道(JR東海)、九州旅客鉄道(JR九州)の社長・幹部らに、金融事業参入や地銀連携の意欲を聞いた。すると、ある社長は「銀行業が成り立つのかどうかを、まさに勉強しているところだ」と明かした。
次ページでは、JR各社への取材と地銀再編の動向を基に、JR東海やJR九州が金融事業に参入する現実味を検証する。







