駅まわりが最優先だと言っても、スケジュールの中に本社での会議や打ち合わせなどが入るので、毎日駅まわりをするわけにもいきません。
はたして、半年後にはなんとか103駅を見てまわることができました。駅長には、駅の中のことを管理する仕事のほかに、地域の一員として地元のみなさんといっしょになって地域づくりのお手伝いをするという役目もあります。そのためには、地域の中に飛び込み、地域のことをよく知り、地域のみなさんといい人間関係をつくらなければいけません。駅長が地域にどれだけ溶け込むかが求められています。
駅まわりの一環で、ある駅を訪問したときの話。
ちょうどお昼どきになったので、「駅長さん、駅の近くでランチでも一緒に食べましょう」と思い切った提案をしてみました。駅長はその駅に赴任してもう半年くらい経っていたから、おそらく駅近くのおいしいお店をよく知っているはずだ、と思ったのです。
駅長は駅構内だけでなく
地域に溶け込むのが重要
残念ながらそうではありませんでした。その駅長は、駅から遠い自宅から毎日通勤し、お昼もほとんど弁当で済ませているため、駅周辺の食べ物屋さんについてあまりよく知らなかったのです。
結局、駅から数分歩いたところの天ぷら屋さんに飛び込みで入ったのですが、そんなにおいしくなく、接客ももうひとつといった感じです。
「ははあん、この駅長は地域に溶け込んでいないな。地域を歩きまわっていないな。地域の人たちと話し込んだりもしたことがなさそうだ」
私の知る限り、ほとんどの駅長は、駅構内を歩きまわるだけでなく周辺のまちにもよく出て歩きまちの人と親しくなり、まちの人たちといっしょにまちづくりのために活動していました。地域に溶け込んでいない駅長は1割もいなかったでしょう。
翌月現場長(駅長)会議を招集し、駅周辺のまちを歩きまわることの重要性をあらためて訴えました。
「駅長は、駅の中のヒト、モノ、カネを管理するリーダーであり責任者です。同時に、駅長はJR九州にとっての地域の顔です。駅の中の管理と同じくらい地域にいかに入り込むかが大事です。駅の中のさまざまな個所を歩きまわるのと同じに、駅周辺の地域も歩きまわらなければいけません」
歩きまわる話から、突然、管理職手当の話に進みます。
「駅長はもちろん管理職です。管理職手当も、そんなに高額ではありませんが、毎月の給与の中に組み込まれています。管理職手当は何のために支給されているかわかりますか」
『夢みる勇気』(唐池恒二、リベラル社)
みんな、営業部長はいきなり何を言い出すのか、というような目で私を見つめます。
「駅構内を歩き、駅の周辺も歩く。歩くといっても、駅長の皆さんは運動靴を履いているわけではありません。革靴でしょう。そうすると、靴がはやく傷みます。1年も経たないうちに新しい靴を買うことになります。管理職手当は靴代なのです」
【3秒アドバイス】
ふと、著者の靴を見てしまいました。だいぶ傷んできていました。名誉のために言っておくと、きれいに磨かれてはいました。







