いま、「言語化力」は必須スキルとして語られます。だから多くの人が、言語化の「型」や「ノウハウ」を学ぼうとする。でも、うまく言語化できるようになればなるほど、「自分のほんとうの気持ち」から遠ざかっていく気がしませんか。しますよね。するんです。
書籍『ほんとうのことを書く練習』で語られている「それっぽい言語化」と「ほんとうの言語化」の決定的な違いから、その理由を紹介します。(構成・写真/ダイヤモンド社書籍編集局・今野良介)
この層にブッ刺さる凛とした強み
言語化できた!! (ˊᗜˋ*)و
…のになぜか空虚 ( ゚д゚) ?
っていうことありませんか。
会議でうまく意見が言えた。
SNSで「刺さる言葉」を投稿できた。
自分のことをすっきり語れた。
でもどっかしっくりこない。
自分の言葉のはずなのに、なんか自分じゃねえような気がする。
その正体について、『ほんとうのことを書く練習』の著者はこう語ります。
とりあえずこう言っておけば納得させられるだろう。とりあえずこう表現しておけば場が丸く収まるだろう。そんなふうにとってつけた言葉は、周囲との関係をスムーズにしてくれることもあるかもしれないが、あなたの言葉ではないし、「ほんとうのこと」ではない。
――『ほんとうのことを書く練習』より
ちょっと耳が痛くないだろうか。わたしは痛い。
言語化の「型」を学べば学ぶほど、人は「とりあえず使える言葉」を手に入れる。
「自分らしさ」「この層にブッ刺さる」「強み」「凛とした」みたいな言葉を、その意味を自分の頭と身体を通して考える前に、とりあえず使っておきたくなる。
というか、AIに聞けば、それなりに伝わりそうな言葉など束になっていくらでも出てくる。
本書は、そこに深刻な問題を見る。
――『ほんとうのことを書く練習』より
耳が痛すぎて根元からもげて芳一になりそうだ。
言語化が上達したはずなのになぜか自己不信が消えないなら、このサイクルに入り込んでいる可能性がある。
では、「ほんとうの言語化」とはどういうものなのか。
本書はこう説明する。
でも、それは、すごくいいことだ。自分の感情・感覚をしっかり認識できているということだから。まだ言葉になっていない気持ちを自覚するなんて、なかなかできないことだ。
まずは逃さないように捕まえておいて、あとでフィットする言葉をじっくり探せばいい。
――『ほんとうのことを書く練習』より
「うまく言葉にできない」ことは、欠如ではない。
むしろ、自分の中に「まだ言葉になっていない感情」がある証拠だ。
問題は「言葉が出てこないこと」ではなく、「とりあえずの言葉で、その感情に蓋をしてしまうこと」だ。
色とりどりの自分の感情を、焦って言葉にしなくていい
「型にはめて言葉を出す」のではなく、「自分の中にある感情を捕まえてから、それに合う言葉を探す」。
始めから型にはめる意識が強いと、どれだけ言語化が「うまく」なっても、自分から遠ざかっていく一方になってしまう。
『ほんとうのことを書く練習』は、「わたしの言葉」を探しにいく本だ。
AIや他人に自分の思考を支配されてしまう前に、焦って言語化するのを踏みとどまろう。
(本稿は、『ほんとうのことを書く練習 「わたしの言葉」で他者とつながる文章術』の内容を引用して作成した記事です)








