看護とは何か?→多部未華子が劇中で絶賛、見習い生がたどり着いた「唯一の正解」にハッとさせられた〈風、薫る第59回〉『風、薫る』第59回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第59回(2026年6月18日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

バーンズ先生とアップルパイ

 週タイトルの「旅立ち」に倣い、りん(見上愛)たちの旅立ちが近づいてきた。

 卒業式。校長先生(伊勢志摩)がりんたち6人に卒業証書を渡す。傍らには松井先生(玄理)。

「私がこの梅岡看護婦養成所を開くにあたって――」と挨拶をはじめると、「いけませんね。皆さん、全く話を聞く態度ではありません」と話を中断する。

 これはりんたちが入学したばかりのときのことを思い出させる。あのときも校長は直美(上坂樹里)のざんぎり髪が気になって話を中断した。気が散りやすい性分なのだろう。

 りんたちが話を聞く態度でないのは、バーンズ(エマ・ハワード)が姿を見せないから。

「皆さんには言わないように口止めされていたんですが。バーンズ先生は今日最後に――」

 校長が全部を話す前に「今日出発されたんですか?」とりんたちは慌てて教室を飛び出す。

 だがバーンズ先生はまだいた。先に辞めたゆき(中井友望)といっしょに、ほのぼのアップルパイを作っていた。それはりんたちへの卒業祝いだった。

 少女時代、アップルパイをおなかいっぱい食べることを夢見ていたと第12週で語っていたバーンズ先生。アップルパイもまた、りんたちが入学したての頃の思い出と重なる。

 これから赴任するバーンズ先生はアップルパイを作ってくれるかしら、とやさしい先生を想像していたら、まったく裏切られた思い出。

 ここでSNSは「伏線回収」と盛り上がると思って脚本を書いているのだろうなあ。視聴者のためにありがたいことである。この回は、見習い編の終わりとして、これまでの積み重ねがいろいろ生きてくる。