ツキノワグマツキノワグマ Photo:PIXTA

クマによる人身事故が相次ぐ中、その遭遇リスクをAIで予測する「クマ遭遇AI予測マップ」が開発された。開発したのはデータサイエンティストとして人口統計データ分析の研究を行っている、上智大学応用データサイエンス学位プログラム准教授の深澤佑介氏だ。秋田県をはじめ、札幌市、宮城県、東京都など全国各地の25のマップを掲載しているというが、「人とクマが交わる場所」をどのように導き出したのか。そして多くのデータから見えた「クマと出会いやすい場所」とは?※本稿は、『超危険!最恐クマのすべて』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。

開発はクマの人身被害が
急増した2023年から

「クマ遭遇AI予測マップ」を作ったきっかけは2023年、秋田県内でクマの人身被害が相次いだことでした。

 私はクマの研究者ではありません。19年間在籍したNTTドコモ時代から、データサイエンティストとして人口統計データ分析について研究してきました。

 具体的には、携帯電話の位置情報などから作成した「モバイル空間統計」を使い、エリアごとの人の流れに基づいて、飲食店やカラオケ店、タクシーなどの需要予測をするといったものです。これらの予測にAIを活用していました。

 これまで培ったノウハウをクマの問題にも活かせないか――秋田県から過去も含めてクマ遭遇の位置情報を提供してもらい、マップ上で可視化してみると、2023年には過去に出ていない場所でも目撃されていました。

 クマが毎年同じ場所に出ているのであれば、通行止めや「立入禁止」の設置を行うことで対策できますが、このような状況下で被害を防ぐためには「予測」が重要になると考えたのです。

 まずは人間とクマ、それぞれがいる場所を捉えるところから始めました。人の分布については国勢調査の人口統計データを用い、クマの生息域はJAXAが公開しているALOSという人工衛星のデータを使って、餌となるブナやコナラ、ミズナラなどの実(ドングリ)が生える落葉樹エリアを割り出す形で定義しています。