スキマバイト利用者を襲う
「本当の地獄」

 2024年10月31日の「凶悪すぎる闇バイトは絶対に減らない…取り締まりも報道も効果なしと断言できるワケ」で詳しく解説をしたが、これだけ「人生を棒に振る」と社会全体で警告している中で、闇バイトに応募をする者が後を絶たない要因の一つに「お金がなくて困っている人が借金できない」ということがある。

 2006年に改正された貸金業法によって段階的に施行され、2010年に完全施行された「総量規制」によって、年収の3分の1以上の金を借すことが法律で禁じられたのだ。

 これによって「お金を借りたくても借りられない」という人が世の中に溢れている。

 株式会社MSSの調査(GMOリサーチによるネットモニターで、全国18〜70代の男女、サンプル数5000程度)では3年以内借入経験者の「目的」として「生活費の不足を補うため」が45.9%とダントツに多く、スキマバイト利用者同じだった。また、なんと驚くことに3年以内借入申込者の47.7%が「借入できないことがあった」と回答しているのだ。

 あれだけテレビで消費者金融やカードローンのCMを流しているので、世の中にはバンバン借金をしている人が多いと勘違いしている人も多いだろうが、実は生活費が足りなくてカツカツの人でもお金を借りることができないという現実があるのだ。

 では、そのような人々はどうするのか。生活費が足りない中で何とかやりくりをするしかないわけだが、そこでは当然、「闇」に流れる人もあらわれる。そう、闇金や闇バイトだ。

 これから設立されるタイミーフィナンシャルが貸金業を始めるなら、当然、この「総量規制」を守らなくてはいけない。

 そして先ほどから繰り返し申し上げているように、タイミー利用者の多くは本業だけでは生活費が足りなくなるほどの低収入の人が多いということがタイミー自身の調査で明らかになっている。つまり、タイミーフィナンシャルはそれほど多額の金を貸し付けることができない。では、生活費も足りない中で、借金もそれほどできないタイミー利用者が、さらにお金が必要になったら誰が手を差し伸べるのか。

 筆者が「闇バイト」のリクルーターだったら、そのような人々は格好のカモとして刈り取りにいく。

 ネットやSNSで「タイミーフィナンシャルでこれ以上お金貸してもらえない方に朗報! タイミー利用者向けのさらに稼げる高額即金バイト」といった偽の広告をつくって勧誘をするだろう。

 スキマバイトをたくさん掛け持ちをしているのでスポットワークへの抵抗感は少ない。「当日即払い」に慣れているので、この手の話に食いつきやすい。しかも、もうどこからも借金できないので、すがるところがない。相手の弱みを握って、犯罪に加担させるような人々にとって、理想的なプロファイルだ。

 総量規制が本格施行される前、2009年ごろから筆者は「借金ができなくなると闇落ちをする人が増える」「借金返済の代わりに強盗や詐欺をさせられる人が増える」と指摘して、金融庁のヒアリングでもその危険性について訴えた。

 しかし、役所や弁護士の皆さんは「借金ができなくてもおかずを減らすなど我慢をすれば対応できる」「借金できなくさせれば多重債務者が減るので犯罪も減るはずだ」という性善説に基づく未来予想図を語っておられた。あれから17年を経て、どちらが今の日本社会の実像に近いかは言うまでもない。

 役所や弁護士の皆さんは責めているわけではない。「地獄への道は善意で敷き詰められている」ということわざがあるように、多くの人を幸せにする施策だと思って進めたことが、実はその逆に多くの人を不幸にするということがよくあるということが言いたいのだ。

 そして、これはタイミーフィナンシャルにも当てはまるかもしれない。スキマバイトで頑張る人々を金融サービスで支援というのは一見すると、多くの人を幸せにする善意の施策だ。

 しかし、スポットワークをする人々の中に「経済的困窮」にある人がかなりいるのは事実だ。彼らに金を貸し付けることで結果、どんなことにあるかまでを考えるべきではないか。

 もっと言ってしまえば、そのような人々がスキマバイトをやらずに生活できるような社会を目指していくことこそが、本当の善意ではないのか。