どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます

なぜ保険相談店は、ショッピングモールの中にあるのか?Photo: Adobe Stock

「なんとなく立ち寄った」人が、
最も契約しやすい理由

 ショッピングモールで買い物を終えて、ふと「保険相談」という看板が目に入る。「ちょっと聞いてみようかな」と気軽に立ち寄り、担当者と話しているうちに、気づけば1時間が過ぎて具体的なプランを検討していた。

 「今日決めなくていいですよ」と言われながら、なぜか次の面談の予約まで入れていた。そんな経験、あるいは周囲で聞いたことはありませんか?

 実はこの「ショッピングモール内の保険相談」という立地は、偶然でも単なる集客の工夫でもありません。保険という「能動的に相談しに行きにくい商品」を、最も警戒心が解けた状態のお客様に届けるための、精密に設計された販促の仕掛けなのです。

「目的なく来た場所」では、
警戒心が働かない(「ついで」の文脈効果)

 保険の専門店やオフィスに「相談しに行く」という行為は、多くの人にとって心理的なハードルが高いものです。「売り込まれるのでは」「断りにくくなるのでは」という警戒心が、相談そのものへの踏み出しを妨げます。

 しかしショッピングモールという空間は、人々が「買い物・食事・娯楽」という目的で訪れる場所です。保険相談店への立ち寄りは「ついでに寄ってみた」という文脈になるため、「相談しに行く」という能動的な決断とは心理的な重みがまったく異なります。

 この「ついで」という文脈が、警戒心を大幅に下げます。

 身構えていない状態で担当者と話し始めると、「聞くだけ聞いてみよう」という軽い気持ちが、自然に「少し真剣に考えてみようかな」へと変化していくのです。

「買い物後の満足感」が、
財布のひもをゆるめる(感情の汎化と意思決定の疲労)

 もう一つの理由は、ショッピングモールで買い物を終えた後の心理状態にあります。

 好きなものを選び、食事を楽しんだ後の人間は、適度な満足感と軽い意思決定疲れが重なった状態にあります。この状態では、自分から複雑な判断を始める気力は残っていない一方、「専門家に整理してもらいながら、話を聞くだけ」という受け身の行動への抵抗は大きく下がります。

 だからこそ、「まあ話を聞くくらいなら」という方向に動きやすくなるのです。

 また、買い物で「お金を使うことへの心理的なハードル」がすでに一度下がっている状態(支払いの文脈への慣化)でもあります。保険という高額な商品の検討も、この「今日はお金を使う日」という文脈の中で始まることで、日常より受け入れられやすくなるのです。

他のお店でも使える
「警戒心ゼロの接触設計」

・ファイナンシャルプランナー
 地域のマルシェやカルチャーセンターのイベントにブースを出し、「家計診断10分無料」として出展する。「相談しに来た」ではなく「イベントに来たついでに」という文脈が、警戒心を取り除き、初回接触のハードルを大幅に下げる。

・学習塾・進学相談
 ショッピングモールや図書館に「勉強の悩み相談コーナー」を期間限定で設ける。「塾の勧誘を受けに行く」ではなく「ついでに聞いてみた」という来場動機が、保護者の警戒心を解いた状態での自然な会話につながる。

・リフォーム会社
 ホームセンターの一角に「リフォーム相談カウンター」を設ける。DIY用品を買いに来たついでに「ちょっと聞いてみようかな」と立ち寄る層は、そもそもリフォームへの関心が高く、かつ警戒心が低い状態にある最良の見込み客になる。

まとめ

 保険の窓口がショッピングモールの中にあるのは、家賃が安いからでも人通りが多いからだけでもありません。
・「文脈効果」により、「ついでに立ち寄った」という文脈が保険相談への警戒心を根本から取り除き
・「感情の汎化」により、買い物後の満足感がその後の相談や検討への前向きな姿勢を後押し
・「意思決定の慣化」により、すでにお金を使った後という状態が、保険という高額商品の検討ハードルを下げる

 という、「能動的に相談しに行きにくい商品」を、最も自然な形でお客様に届けるための、精密な立地と文脈の販促戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。