どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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「いざというとき」より「今」に見てもらうほうが、
単価が上がる理由
「生前相談会」「終活フェア」といった案内が、葬儀社からポスティングされてくる。「まだ早い」と感じながらも、ふと足を運んでみると、さまざまなグレードの棺や祭壇・骨壺が並んでいる。
「そうか、こんなに違うものなんだ」と上位グレードを手に触れながら、「大切な人のときには、きちんとしてあげたい」と感じ、気づけば希望するグレードが変わっていた。そんな経験、あるいは見聞きしたことはありませんか?
実はこの「生前見学会」は、単なる早期顧客獲得の手段ではありません。人間が最も「良いものを選ぶ動機」を持てる状態のときに体験させることで、自然と上位グレードへの納得感を作る、精密な販促の仕掛けなのです。
「切迫していない状態」だからこそ、
冷静に価値が伝わる(認知的余裕と情報処理)
実際の葬儀は、悲しみと疲労と時間的プレッシャーが重なる極限状態の中で進みます。そのような状態では、人間の認知資源は著しく低下し、「どれでもいい、早く決めたい」という回避的な意思決定に陥りやすくなります。
心理学では、こうした状態を「認知負荷」が過剰になった状態として説明します。負荷が高いときほど、人は単純なデフォルト選択(最も安価・最も一般的)に流れてしまいます。
一方、生前見学の来場者は、精神的にも時間的にも余裕があります。各グレードの違いをじっくりと比較し、素材や仕上げの差を五感で確かめながら、「どのような見送り方がふさわしいか」という本来の価値基準で判断できる状態にあるのです。
「愛する人への贈り物」という文脈が、
価格への抵抗を溶かす(利他的動機と購買の正当化)
通常の消費では、「自分のため」にお金を使うとき、人は価格への抵抗を感じやすくなります。しかし「大切な人のため」という利他的な文脈では、心理的に支払いが正当化されやすくなることが知られています。
葬儀というサービスはまさに、自分ではなく「逝った人への最後の贈り物」という文脈を持ちます。生前に展示を見ながら「あの人には、このくらいのものを用意してあげたい」と感じた体験は、実際の場面でも上位グレードを選ぶ強力な根拠になります。
さらに、一度体験した「良いもの」は心理的所有感を生みます。展示場で上位グレードの棺に触れ、「これだな」と感じた記憶は、実際の選択場面でも「あのときのもの」として強く引き寄せる力を持つのです。
他のお店でも使える
「余裕のある状態での体験設計」
・リフォーム会社
「来年の夏前にキッチンを替えたい」という段階のお客様に、ショールーム見学を案内する。工事が差し迫った状態よりも、じっくり検討できる時期に上位グレードを体験させることで、予算設定が変わりやすい。
・介護用品・施設
「まだ元気なうちに見ておきたい」という親世代・子世代に、見学ツアーや体験宿泊を提供する。緊急時に慌てて選ぶより、余裕ある状態で見学した施設への信頼感と上位プランへの納得感が形成される。
・保険代理店
「今は健康だけど将来の備えを」という段階に、シミュレーション面談を行う。入院や手術の直前という切迫した状況では選べない高度な保障内容も、余裕のある今なら比較検討ができ、成約単価が上がりやすい。
まとめ
葬儀社が生前見学会を開くのは、「早めに契約を取る」だけが目的ではありません。
・「認知的余裕」により、切迫した感情状態では不可能な「本来の価値基準での選択」を可能にし
・「利他的動機と購買の正当化」により、愛する人への贈り物という文脈が価格への抵抗を自然に溶かし
・「心理的所有感」により、事前に体験した上位グレードへの愛着が、実際の選択場面でも引き寄せる力を持つ
という、お客様が「落ち着いて価値を感じられる状態」を作ることで、自然と上位グレードが選ばれるよう設計された販促戦略なのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




