炭素繊維使用のフィギュアスケート靴開発 次期冬季五輪でのメダル獲得貢献を目指すカーボンファイバーを使用したフィギュアスケート靴「Tobiha」。ブレードには元フィギュアスケート五輪代表の小塚崇彦氏プロデュースの「KOZUKA BLADES」を採用

 小塚氏をはじめ、多くのフィギュアスケーターの声に耳を傾ける中、浮かび上がってきた課題は、「従来の革製シューズの使用による劣化やクオリティーのばらつき、足にフィットさせるための調整作業に伴う苦労でした」と松本氏。

 そこで、強度と柔軟性、ジャンプ着氷時の安全性といったトレードオフの課題を見据え、求められる完成基準に向けた試作・テストを繰り返すも、「そのたびに新たな課題が顕在化し、一進一退の状況が続きました」と松本氏。

 開発期間は苦節8年。繊細な調整が求められる分野にあって、カーボンファイバーを加えた複合材料加工において最も高品質な成形が可能となる「オートクレーブ成形」を用いた、史上初のフィギュアスケート靴が誕生する。

炭素繊維の反発力を実現
量産化により品質も担保

炭素繊維使用のフィギュアスケート靴開発 次期冬季五輪でのメダル獲得貢献を目指す2026年4月、ティーワンの工場がある愛媛県松山市の県庁でのTobihaの完成報告会。左から、お披露目でも滑った小塚氏、中村時広知事、松本氏

 最大のポイントは従来の革製シューズから約25%の軽量化を図り、カーボンと合成繊維の組み合わせなどにより、しなやかさと強度のバランスを実現していること(特許取得済み)。カーボンファイバーの持つ反発力もジャンプに好影響を与え、けが防止や疲労軽減が期待できる。

 もう一つのポイントが量産化により、個体差のない安定した品質の供給を実現していること。足になじませる調整の手間が不要で、耐久性も高い。

 また、多くのフィギュアスケーターたちのフィードバックを基に、「オーダー・セミオーダーで一人一人の選手の可能性を引き出す靴の提供を目指しています」と松本氏は言う。

炭素繊維使用のフィギュアスケート靴開発 次期冬季五輪でのメダル獲得貢献を目指すイヨテツスポーツセンターでのTobihaのお披露目で滑ったプロフィギュアスケーター・廣田彩乃氏もTobihaを高く評価

 長期にわたる開発期間を要しながらも、プロのアスリートが求める最高水準を追求する作業を通じ、「社員のやりがい醸成や実地での技術力研さんにもつながっています」と松本氏。先に見据えるのは、30年のフランス・アルプス冬季五輪。「広く選手に使っていただき、メダル獲得に貢献したいですね」と語る。

 フィギュアスケートは全国信用金庫協会もオフィシャルパートナーとして協賛している。4年後に期待したい。

(取材・文/大沢玲子、「しんきん経営情報」2026年7月号掲載、協力/さがみ信用金庫

事業内容:カーボンファイバーを使用したレース用自動車部品、自転車部品などの製造
従業員数:25人
所在地:神奈川県秦野市曽屋672‐2
電話:0463‐75‐9155
URL:tec-one.co.jp