テーブルに座り悩む表情を見せる女性写真はイメージです Photo:PIXTA

「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」への関心が高まっている昨今。家族との時間を増やしたい、自由に生きたいなど、前向きな理由が語られることも多いが、人々をFIREへと向かわせる背景には別の要因もあるという。現代社会で働く人々の心理を紐解く。※本稿は、みずほ総合研究所の河田皓史『働く人が減っていく国でこれから起きること』(朝日新書)一部を抜粋・編集したものです。

「会社とは何か?」
働く人の数だけ答えがある

 従業員にとって、会社とは何だろうか。人によって考え方は様々だろうが、筆者は「サービスの対価として金銭を支払うファシリティ」と考えている。別の言い方をすれば、「仕事」とは生活に必要な金銭を得る手段としてのサービス提供であり、「会社」とは自分が提供するサービスを受け取り、対価としての金銭を支払う機械のようなものだと思っている。

 こうした捉え方が多数派だとは全く思わないし、社会通念上の模範解答とは程遠いことも自覚している。世の中には、会社を「自己実現の場」「社会貢献の場」「仲間と協働する共同体」などと、もっと積極的な意味を有するものとして捉えている人も多く存在するだろう。

 そうした答え方のほうが、社会通念上の模範解答に近いことは言うまでもない。会社なり仕事なりを本心からポジティブなものとして捉えられるのであれば、それはもちろん素晴らしいことであり、そういう人はぜひ会社で長く働くべきである。

 ただ、本稿を読んでいる方には、「自己実現」や「社会貢献」など熱い言葉を投げかけられると逆に冷めてしまう人も少なくないのではないか。

 もちろん、最初に就職した時点では、自分の仕事が世のため人のためになることをイメージしていただろうし、自己実現・社会貢献といった言葉もそれほど抵抗なく受け入れることができていただろう(筆者もそうだった)。

なぜ現代人は「FIRE」を
志向するようになったのか

 しかし、会社勤めを長く続けた結果として、そうしたポジティブな感情が徐々に失われていくことも少なくないだろう。相次ぐ長時間の会議、旧態依然とした業務フロー、過剰な社内調整、終わりなき出世競争、「偉い人」に対する忖度、各種ハラスメント……。

 そうした不愉快の蓄積を通じて、就職時点では「自らやろうとしたこと」だったはずの仕事が、いつの間にか「やらなくてはいけないこと、やりたくないこと」になってしまう。