こうした現象を社会学の文脈に当てはめれば、マックス・ウェーバーの「鉄の檻」に近い状況だと思う。官僚制が高度に発達すると、形式的なルール等に縛られ個人の主体性や柔軟性が失われることを、ウェーバーは「鉄の檻」と呼んだ。「経営者にとっての合理性」を担保するための企業内ルール・慣行・手続き等が「従業員」の自由や目的意識を抑圧し、形式主義や義務感だけが残る構造は、多くの企業で現実に生じているように思う(いわゆる「JTC」〈Japanese Traditional Company〉と揶揄される企業にそうした傾向が強いだろう)。
そのように仕事が「やりたくないこと」となる中で、「会社が嫌だ、仕事が嫌だ」という気持ちを口に出す(あるいはSNSに投稿する)ことは、今では日常となった。その1つの象徴が、「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)という言葉の流行である。FIREした後にやりたいこと(家族と過ごす時間を増やす、趣味に没頭する、世界中を旅する、田舎でスローライフを送る、など)もFIREの動機の1つには違いないだろうが、より本質的には「会社・仕事に対する拒否感」の高まりが大きいだろう。
「FIRE」よりも
まずは転職したほうがいい人
なぜ現代人は、「FIRE」という言葉を流行させずにはいられなかったほどに会社・仕事が嫌になったのだろうか。例えば、長時間労働の常態化や各種ハラスメントを受けて、会社に対して強い拒否感を持つようになり、FIREを望むようになった人もいるだろう。こうした場合には、明らかに会社サイドに問題があるため、そこから離れたいと思うのは自然なことである。
話の本筋から少し脱線するが、筆者個人の意見としては、そのような理由で「今の会社がイヤだ」という場合は、FIREよりもまずは転職活動をお勧めしたい。全ての会社が激務なわけではないし、全ての会社でハラスメントが横行しているわけではない。あなたにとって良い会社(少なくとも今の会社より良い会社)は必ず存在する。







