異国のおもしろさは、だいたいここにある。

 わかりにくい世界を、細かい操作で攻略していく感じがおもしろいのだ。

 たとえば、エレベーター。日本のエレベーターでは、基本みんな無言で乗り込む。誰もそれを気にしない。むしろ喋りかけたりしたら「え、なに?」となる。

 では、海外ではどうか。エレベーターの中で人に遭遇したら、むしろ積極的に挨拶を交わす。ただそれは、フレンドリーな交流が目的というわけではなく、自分がいかに無害な存在であるかを相手にアピールする狙いがあるからだ。

 無言でやり過ごそうとすると、たまたまエレベーターに乗り合わせた人から、「コイツ、なに考えているんだ……」と警戒され、一触即発の事態にまで発展することもある。

 つまり、面倒なトラブルに巻き込まれないためにも挨拶は積極的にしたほうがいい。安全保障上、コスパがいいのは言うまでもなく、「郷に入っては郷に従え」は、最低限のリスク管理なのだ。

旅の醍醐味は予測不能な
トラブルにある

 僕は困りたくて旅に出る。

 とりわけ、海外に出る旅というのは、驚くほど効率が悪い。移動には時間がかかるし、お金もかかる。そのうえ言葉も通じない。

 日本では、電車もバスも時刻表どおりに目的地に着くのが当たり前だけど、外国で乗り物に乗ろうとすると、時間どおりに来ないのは普通で、目的地とは真逆の知らない場所に連れていかれることすらある

 日本と違ってバスは確実に遅れる。注文しても違う料理がテーブルに置かれる。道に迷う。たまに怖い。でも、だからおもしろい。

「街並みがきれい」「地元の人たちがみんな親切」「食べ物が美味しい」といった楽しみ方もけっこうだ。

 でも旅の真のおもしろさは、予測不能のトラブルに見舞われることにある。見通しが立たなくなったら、そこで立ち止まって強制的に考えさせられるからだ。

「このまま待つ?」「別ルートを探す?」「今日は諦める?」「助けを求める?」

 そういう小さな判断が連続する。

「リスクがあるからリターンがある」と言われる。旅はまさにそれだ。安心・安全・スケジュールどおりに観光名所をハシゴする旅行パックだと、そこにあらたな発見はないし、何より「勝った感じ」がない。