習近平国家主席 Photo:EPA=JIJI
中国は米国との競争を、目先の勝ち負けではなく「時間」の長さで捉えている。では、習近平政権が「今後3年間」という時間軸を重視するのはなぜなのか。トランプ政権の残り任期を見据え、中国はその間に何を狙っているのか。元駐中国大使の垂秀夫氏が、中国外交を読み解くカギとなる「時間」の戦略を解説する。※本稿は、元駐中国大使・立命館大学教授の垂 秀夫『「力の時代」を生き抜く 戦略的思考』(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。
中国はなぜ「時間」を
戦略資源と考えるのか
習近平外交を丁寧に観察すると、中国が米国を「主要矛盾」と捉え、長期的には「戦略的闘争の相手」と位置づけていることが見えてくる。つまり、中国は外交全体の最優先の焦点を米国に置いているのだ。
その上で、中国はこう考える。中国側の説明を要約すれば、
――中国は上昇気流に乗っており、米国は下降気流にある。上昇気流と下降気流がぶつかれば、乱気流が発生するが、それこそが摩擦である。しかし、時間が経てば必ずや上昇気流が上にいく――というものだ。
「時間は私たちの側にある」――この言葉を、私は中国側の口から何度も聞いた。
はたして彼らの戦略が実を結ぶかどうか、私自身は疑問を強く抱いている。しかし、彼らにとって時間は単なる流れではなく「戦略資源」であることを理解しなければならない。そして日本もまた、その視点を持たなければ中国との交渉で主導権を握れないのである。
習近平は、国際秩序に対するアプローチも変化させた。彼は現在の国際秩序は「公正でも合理的でもない」と繰り返し主張し、冷戦後の国際秩序のリーダーはあくまで米国であり、そのルールや規範は米国をはじめとする西側の価値観と利益を色濃く反映している、と認識している。したがって、中国が「中華民族の偉大な復興」を実現するには、この国際秩序を中国にとって有利な方向に再編しなければならない――ここに、米中関係をめぐる習近平の基本的な長期視座がある。







