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なぜオンライン英会話スクールは、月謝制ではなく「回数券(チケット制)」を用意しているところが多いのか?Photo: Adobe Stock

「使い切らなきゃ」という気持ちが、
継続の原動力になる

 オンライン英会話スクールを見てみると、月額固定の「月謝制」だけでなく、「10回券」「30回券」といった回数券・チケット制のプランを用意しているところが少なくありません。

 一見、月謝制のほうがシンプルで分かりやすいように思えます。それなのに、なぜわざわざ「回数」を区切って販売するお店が多いのでしょうか。

 実は、この「回数券」という売り方は、単なる料金体系の違いではありません。お客様自身に「まだ使っていない分がある」という意識を持たせ続け、自然とレッスンへの参加を継続させるための、非常によく考えられた仕掛けなのです。

「払ったのに使わない」という状態が、
心理的な負債になる(サンクコストの分割可視化)

 人は、すでに支払ったお金や労力を無駄にしたくないという心理から、それを回収しようとする行動を取りやすくなります。これは「サンクコスト効果」と呼ばれ、一度支払った対価が「もったいない」という感覚を通じて、その後の行動を左右します。

 月謝制の場合、一度支払えばその月の間はいつ受講しても未受講でも金額は変わらず、「今月分の元は取った」という感覚が曖昧になりがちです。

 一方、回数券は「あと◯回残っている」という残数が常に可視化されます。1回受けるごとに残数が減っていくため、「使い切らなければもったいない」というサンクコストの意識が途切れることなく続き、レッスンへの参加を後押しし続けるのです。

「有効期限」が、先延ばしを防ぐ
(緊急性の演出)

 もう一つの理由は、回数券の多くに「購入から◯ヶ月」といった有効期限が設定されていることです。

 月謝制であれば「今週は忙しいから来週まとめて受けよう」と先延ばしにしても、大きな損失を感じにくいものです。しかし、回数券に期限があると、「このままでは未消化のまま失効してしまう」という損失回避の意識が働き、優先順位を上げてスケジュールを確保しようとします。

 「残数」と「期限」という2つの見える化によって、お客様自身が自らを継続へと動かしていく仕組みが作られているのです。

他の業種でも使える
「未消化の見える化」設計

 支払い済みの対価を「残数」として可視化し、継続利用を促すこの手法は、他の業種にも応用できます。

整体院やエステサロン:
 月額通い放題ではなく「回数券(6回券・12回券)」を用意し、施術履歴とともに残数をレシートや会員アプリで明示する

・フィットネスジムのパーソナルトレーニング:
 セッション単位のチケットを販売し、購入時に「有効期限」を設定することで、通わない期間が続くことへの心理的な引っかかりを作る

・料理教室やワークショップ:
 単発参加ではなく「回数券」形式にし、次回開催日の案内とあわせて「残りチケット枚数」を通知する

まとめ

 オンライン英会話スクールが月謝制ではなく回数券を用意するのは、単に料金プランの選択肢を増やすためではありません。

「サンクコスト効果」により、支払い済みの回数を「使い切らなければもったいない」という意識に変え
・「有効期限」により、損失回避の心理を働かせて先延ばしを防ぎ
・「残数」という形で未消化分を常に見える化することで、お客様自身が自発的に継続を選ぶ状態を作っている

 という、支払いのタイミングを分割し、その都度「もったいなさ」を意識させることで、無理な勧誘なしに継続利用を促す販促戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。