「このまま定年まで働くべきか。それとも早期退職して、本当にやりたいことを始めるべきか」。50代になると、多くの人が一度はこの問いに向き合います。しかし、その答えは「退職するかどうか」ではないのかもしれません。『世界の果てのカフェ』には、その迷いを晴らしてくれる印象的な物語があります。「何度読んでもハッとする」と話題の一冊から、相談者に響いた名言について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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早期退職すべきかどうか
最近、こんな相談があった
相談者は、決して今の仕事が嫌いなわけではなかった。
ただ、「このまま会社員人生を終えていいのだろうか」という不安があった。
「本当にやりたいことは、引退してからでも遅くないのか」
その答えを探しているようだった。
私は、この相談を聞いて『世界の果てのカフェ』に登場する「漁師と実業家」の話を思い出した。
「引退したら幸せになれる」という思い込み
物語では、漁師が毎日を穏やかに暮らしている。
朝は家族と朝食を囲み、子どもを見送り、数時間だけ魚を釣る。
昼寝をし、夕方には妻と浜辺を散歩し、夕日を眺める。
それを聞いた実業家は、こう提案する。
――『世界の果てのカフェ』より
これは、多くの人が信じている人生設計そのものではないだろうか。
今は我慢する。今は働く。そして、いつか自由になる。
そう考えている人は少なくない。
漁師が返した「たった一つの質問」
しかし、漁師は穏やかに問い返す。
「なぜ私がそんなことをするんだ?」
実業家は答える。
「お金のためですよ。そうしたら大金を稼いで引退できます」
すると漁師は、さらに問いかける。
「引退したら、何をするんだ?」
実業家は言う。
「好きなことをすればいいですよ」
それに対して漁師は微笑みながら言う。
「家族と朝食を食べて、少しだけ釣りをして、夕方には妻と散歩して、夕日を眺めることができるかな?」
この場面を読んだとき、私はハッとした。
実業家が何十年もかけて手に入れようとしていた人生を、漁師はすでに今日、生きていたのである。
早期退職するかより、「今日」をどう生きるか
相談者は、「退職するかどうか」で悩んでいた。
しかし、本当の問いはそこではない。
「引退したらやりたいことを、今日の人生に少しでも取り入れられないか」ということではないだろうか。
もちろん、現実には生活費もある。
仕事を辞められない人もいる。
だからといって、「やりたいことは10年後、15年後まで全部お預け」にする必要もない。
週末に始める。一日30分だけ時間をつくる。
少しずつでも、自分が望む人生を今の生活に組み込んでいく。
その積み重ねが、人生を変えていく。
人生に効く、たった一つの名言
相談者に私はこう伝えた。
「引退後に送りたい人生なら、今日から少しだけ始めてみてください」
早期退職するかどうかは、大切な決断だ。
でも、それ以上に大切なのは、「幸せは引退後にしか手に入らない」と思い込まないことだ。
『世界の果てのカフェ』の漁師は、未来のために今を犠牲にしていなかった。
今を大切に生きた結果、その毎日が理想の人生になっていた。
人生は、「いつか」始まるものではない。
本当にやりたいことは、今日という一日の中から始められる。
その視点を持てたとき、「退職するかどうか」という悩みも、少し違って見えてくるはずである。
(本稿は、『世界の果てのカフェ』の発売を記念したオリジナル記事です)




