会議や面接で「この人、何を言いたいんだろう?」と感じる人がいます。本人は一生懸命話しているのに、いつの間にか話が脱線してしまうのです。『言語化だけじゃ伝わんない』では、その原因を「暗い洞窟を歩く感覚」にたとえています。その意味を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「なんの話してるの?」と感じる人
会議や面接で話を聞いていると、
「さっきまで何の話だったっけ?」
と思うことがあります。
最初はテーマに沿って話していたはずなのに、気づけばまったく別の話になっている。
本人も一生懸命話しているだけに、途中で止めることもできません。
こうした現象は、なぜ起きるのでしょうか。
話している本人も迷子になっている
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、まずこんな感覚が紹介されています。
人と会話をしながら、こんなふうに思うことがあります。
それまで何を話していたか忘れてしまった。
本当は何を言おうとしていたか忘れてしまった。
まるで、暗い洞窟の中を、たいまつを片手に歩いているような感覚です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
この「洞窟」のたとえは、とてもわかりやすいものです。
話が迷子になる人は、最初から話を組み立てられていないわけではありません。
むしろ、歩きながら少しずつ道を探している状態なのです。
だから、本人も途中で「何を話していたんだっけ?」と見失ってしまいます。
少しずつズレるから気づけない
本書では、その様子を極端な例で説明しています。
「生成AIについてどう思いますか?」と聞かれて答えているという状況です。
「はい、AIというのは、アーティフィシャル・インテリジェンスの略ですね」
すでに不安になる出だしですが、もう少し我慢してください。
「インテリジェンスは略するとインテリです。勉強のできる人のことをインテリと呼びますよね。私も学生時代はよく勉強していましたよ。参考書とか買って。印象に残っているのは、タイトルは忘れてしまったのですが、黄色い表紙の参考書です。私、黄色が好きなんです。風水的に、儲かりそうな気がして。いや、年収は内緒なんですけど」
だいぶズレてしまいました。
生成AIについて語りはじめたのに、最終的には年収の話。
しかし、前後の文章だけを見ると、そこまでズレてはいません。
ちょっとしたズレが続いていくだけで、最後は大幅にズレてしまう。
これは極端な例ですが、文章を並べるとき、こういうことが起きているのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
もちろん、ここまで極端な人は少ないでしょう。
しかし、話が長くなる人には似た現象が起きています。
一文ごとのつながりは自然です。
だから話している本人も、「まだ同じ話をしている」と思っています。
ところが、小さな脱線が積み重なり、最初のテーマからどんどん離れてしまうのです。
でも、つなげるのは難しい
本書では最後にこう語られています。
文を複数つなげて文章にしていくことが難しいのです。
1文目を話しはじめたときは、この先どこへいくかを意識していたかもしれません。
でもそれが、2文目、3文目、と続いていくと怪しくなっていく。
4文目、5文目……。暗いので手探りで歩いていくしかありません。
1文目を話しはじめたときの光は見えなくなり、暗くなっていきます。
いま話している文章だけがたよりです。
前の文といまの文にはつながりがある。次の文につなげることもできる。
ところが、文を並べていくうちに、自分が何を話しているかわからなくなっている。
「おかしい、どうして自分はこんなことを話しているんだろう……?」
そうして、暗闇のなかで迷子になってしまうのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
話がヘタな人は、一文がヘタなのではありません。
一文と一文をつなぎ続けるうちに、最初の目的地を見失ってしまうのです。
「いま何の話だっけ?」を思い出せる
『言語化だけじゃ伝わんない』は、話し方の本質を教えてくれます。
話が上手な人は、難しい言葉を知っている人ではありません。
会話の途中でも、「いま何について話しているのか」を何度も確認できる人です。
目的地を見失わず、相手をそこまで案内できる。
だから、話がわかりやすいのです。
面接や会議で「この人、何の話をしているんだろう」と思われないためには、一文ごとのつながりだけを見るのではなく、「最初の質問に答えているか」を何度も確認すること。
その小さな意識が、話を迷子にしない一番のコツなのです。
(本記事は、書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』を元にしたオリジナル記事です。)
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








