認知症は、年齢だけで決まる病気ではない。じつは毎日の食習慣が、将来の脳の健康を大きく左右すると専門家は指摘する。なかでも、多くの人が「体にいい」と信じて食べている食品には、認知症リスクを高めかねない落とし穴があるという。元オックスフォード大の医学研究者が警鐘を鳴らす「健康的な食品」の意外なリスクとは。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・石井一穂)
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医学研究者が警鐘を鳴らす「体にいい食事」
「体にいい食事」と聞いて、多くの人が思い浮かべるものがある。
ナッツやチーズだ。
糖質が少なく、健康にも良い。
ダイエット中の間食としても人気が高い。
だが、その「健康的な食事」が、かえって認知症リスクを高める可能性があるとしたらどうだろうか。
元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家・下村健寿氏は「ナッツやチーズは諸刃の剣」だと警鐘を鳴らしている。
ナッツとチーズは「体にいい」では済まされない
「ナッツやチーズは吸収に時間がかかるから急激な血糖値上昇を抑える」
「含まれている脂肪酸やビタミン、ミネラルなどの成分が代謝を活性化して、血糖値の上昇を防いでくれる」
テレビや雑誌の健康特集でも、そう説明されることが多い。
そのナッツやチーズが認知症のリスクを高める理由とは?
下村氏は、次のように指摘している。
確かにナッツやチーズには、身体にとって良い成分が含まれています。ただし、良い効果を得るには、たった1つだけ重要な条件があります。
それは「適量ならば」という点です。
医学的に明らかになっているナッツの1日の摂取許容量をご存じでしょうか?
答えは、わずか30グラムです。手のひらに軽く一杯程度の量にすぎません。
ですが、ナッツやチーズを「ごく少量だけ食べる」ということは、ほとんどないのではないでしょうか。ナッツ、つまり豆類は、「あとひき豆」という言葉があるくらいに、一度食べ始めると止まらなくなる食べ物の代表です。「あと一口だけ」という誘惑を断ち切るのは簡単ではありません。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
ナッツやチーズが「体にいい」と言われるのは、あくまで「適量ならば」だ。
一方で、その適量は私たちが思っているよりもはるかに少ない。
そのため、多くの人が許容量以上に食べすぎてしまっているのだ。
食べすぎが招く「脳への悪影響」
「体にいいものでも、そりゃ食べすぎれば逆効果になるのは当然だ」
そう思うかもしれない。
だが、ナッツやチーズの食べすぎには、とくに気をつけるべき理由がある。
下村氏は、こう説明する。
ナッツやチーズの食べすぎに気をつけていただきたいのは、摂取しすぎると確実に体に悪影響を及ぼすからです。まさに「諸刃の剣」なのです。
その要因の1つが、これらの食物に大量に含まれている「脂質」です。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
ナッツから摂れる脂質は「体に良いオイル」とされてはいる。
しかし、体に良いとはいえ油は油だ。
「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」と言うように、いくら体に良い効果があるとされているオイルでも、摂りすぎてはいけない。
食べすぎれば、余った脂質は内臓脂肪や肝臓に蓄積される。
内臓脂肪は全身の炎症を引き起こし、さらに脂肪肝になると、血糖値をコントロールするインスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」を招く。
肝臓は、本来脂肪が溜まるべきではない場所です(本来溜まる場所ではないところに溜まった脂肪のことを「異所性脂肪」といいます)。肝臓は、インスリンの力を使って血中への糖の出し入れを制御する重要な臓器でもあります。そこに脂肪が蓄積してしまうと、インスリンが十分に効果を発揮できなくなってしまいます。つまりインスリン抵抗性になってしまうのです。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
この炎症とインスリン抵抗性が、アルツハイマー病のリスクを高める要因になると、下村氏は指摘している。
「体にいいなら、いくら食べてもいい」という思い込みを捨てる
ナッツやチーズは決して「食べ放題でいい食品」ではない。
健康に良い成分を含む一方で、食べすぎれば認知症リスクを高める可能性もある。
だからこそ重要なのは、「何を食べるか」ではなく、「適量」を意識することなのである。
(本稿は、下村健寿著『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容をもとに作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








