将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な習慣によって、そのリスクを高めてしまうことがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その背景にあるのが、「糖」による影響だ。そう指摘するのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏。著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』で、「糖に毒された脳」を「糖毒脳」と名づけ、糖が認知機能を崩壊させるメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介している。同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・石井一穂)
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認知症になる人の共通点は、「脳のゴミ」
認知症になる人に共通して見られる特徴がある。
それは、認知症の原因物質と言われているアミロイドβやタウといった「ゴミ」が、脳内に蓄積していることだ。
認知症というと、高齢になってから突然発症する病気だと思われがちだが、このゴミの蓄積は、発症する何十年も前から始まっていると言われている。
元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』で、こう指摘している。
アミロイドβやタウといった「ゴミ」の蓄積による神経細胞の破壊は、少しずつ、ジワジワと進行していきます。
注目すべきは、こうした脳内のゴミの蓄積は、自覚症状が現れるはるか以前、なんと20代や30代といった若年層から始まっている可能性が、近年の研究で示唆されている点です。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
アミロイドβやタウは、本来は脳の正常な機能にも関わる物質だ。
しかし、加齢や代謝異常などによって適切に処理されなくなると、「脳のゴミ」として少しずつ蓄積し、神経細胞を傷つけてしまうのである。
20代、30代から始まっている「些細な変化」
脳のゴミは、20代や30代でも溜まり始めている。
さらに恐ろしいことに、その状況に私たちが気づくのは難しい。
なぜなら脳には驚くべき「代償能力」が備わっているからだ。
下村氏はこう説明する。
私たちの脳は驚くほど順応性が高く、なんとかバランスを保とうとします。タウの病変によって脳神経細胞の破壊が始まっていても、残されている脳神経細胞をフル活用して脳全体の機能をギリギリのところで維持しようと奮闘するのです。
ですから、このプレクリニカル期(症状が出る前段階)の脳には、軽い物忘れ、嗅覚や味覚がおかしくなった、といった比較的軽微な症状しか現れません。
――『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』より
つまり脳は、多少のダメージであれば残された神経細胞を総動員し、機能を維持しようとする。
そのため初期には、目立った症状が現れない。
人の名前が出てこない。
会話で「あれ」「それ」が増える。
物の置き場所を忘れる。
こうした変化は、単なる加齢と片づけられがちだが、こういった症状が現れ始めた頃には、脳はすでにギリギリのバランスで機能している状態である可能性がある。
脳の異変はある日突然始まるのではなく、何十年も前から静かに進行している。
もちろん、すべての異変が認知症につながるわけではないが、若いうちから脳の健康を守る習慣を身につけることが、将来の自分を守ることにつながるのは確かだ。
(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








