株式投資の成果を左右するのは、銘柄選びだけではありません。売買のタイミングも重要です。株で利益を出し続けている人たちは、チャートのどこを見て、売買のタイミングを判断しているのでしょうか。「チャートで売りや買いの勢いを読み取る」と話すのは、2000億円超を運用した元ファンドマネジャーで、楽天証券の窪田真之さん。この記事では、チャートを使った売買判断のポイントを紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

株で資産を伸ばせる人は絶対にやらないNG思考・ワースト1Photo: Adobe Stock

自分の「過去の売値・買値」を判断基準にしてしまう

「3,000円で売った株が、その直後、4,000円まで上がってしまった」

「4,000円で買ったら、途端に3,000円まで下落した」

 売った直後に好材料が出て急騰する。買った直後に悪材料が出て急落する。個人投資家にとって、決して珍しい話ではありません。そんな時あなたなら、どうしますか?

 窪田さんは『株トレ ファンダメンタルズ』編で、「過去の売値や買値にとらわれず、現在の投資判断に素直に従って売買できるようになれば上級者」と語っています。

 本来、投資判断で考えるべきなのは、「今この時点で、この株を買うべきか、それとも売るべきか」ということです。しかし実際には、「前回いくらで買ったか」「前回いくらで売ったか」が頭から離れず、その価格が現在の判断基準になってしまう人は少なくないのです。

売った途端に急騰、あなたならどうする?

 では、本書に掲載されている、具体的なシチュエーションで考えてみましょう。

 大手医薬品A社株を7カ月前、2,200円で購入。がんの治療効果を高める画期的新薬を発売したことから成長株として期待され、株価はその後2,800円まで上昇しました。

 ところがその直後、A社の新薬を投与した患者が死亡する事例が報告され、副作用への懸念が持ち上がりました。この報道を受けて株価はじりじりと値下がりしてきたため、2,600円で売却しました。

 その直後、「A社新薬に問題となる副作用はない。薬剤投与と患者の死亡に因果関係がないことが判明」と報じられ、株価は急反発しました。

 この時点で、チャートは次の通りです。前回買った位置と売った位置は、チャートに記されています。

 あなたなら、どのような投資判断を下しますか。買い、様子見、それとも空売りでしょうか。

この株は買い、様子見、空売り?

テクニカル分析では「買い」。成長株として買い直す

 A社株は売買高が大幅に増加しながら高値を更新しています。テクニカル分析では、さらなる上昇が期待できる形です。また、副作用への不安も後退したことから、ファンダメンタルズ分析でも成長株として再評価できます。

 チャートとファンダメンタルズの両面から考えれば、この局面では「買い」が合理的な判断になります。

 ところが、ここでA社株を素直に買い戻せる人はあまりいません。理由は、自分が2,600円で売ってしまったことが頭にあるからです。

「2,600円で売った株を2,900円で買い直すなんてもったいない」

 そう考えてしまうのは自然なことです。しかし、その感情はマーケットの状況とは一切関係ありません。投資判断の基準にするべきではないのです。

 窪田さんは、ファンドマネジャー時代にもこうした局面を何度も経験したそうですが、そのようなときでも「迷うことなく、売値を大きく上回る株価で買い戻す」と言います。

 大切なのは、過去の自分の売買価格に縛られず、その時点の情報から導かれる投資判断に素直に従うことです。

「様子見」でもOK

 ただし、「問題となる副作用はないという報道だけでは情報として不十分」と考える人であれば、様子見も間違いではないと窪田さんは語っています。

 治療効果の高い新薬には、常に副作用への懸念が伴います。A社の新薬は、定められた治験を経て厚生労働省の承認を受けており、その時点では「問題となる副作用はない」と判断されています。

 ただ、医療現場では、承認されたばかりの画期的新薬をすぐに使うことには慎重です。実際に使用した医療機関の評価や、副作用に関する追加情報を確認しながら、少しずつ使用が広がっていきます。その過程では、副作用や薬効について新たな報告が次々と出てきます。新薬を開発した企業の株価は、そうしたニュースに敏感に反応し、大きく上下することも珍しくありません。