「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。そんな木下氏が語る、「トイレットペーパー事件」の教訓とは?(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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トイレットペーパーがない!!
私自身、たった一人で起業した当初はすべての仕事を一人でこなしていました。
当時はまったく余裕がなく、「重要でない仕事」をする時間は存在せず、やっている仕事はすべて「重要な仕事」でした。
あるとき、社運を賭けた大切なプレゼンを控え、出発まであと30分というタイミングで、最後のシミュレーションをしようとしていました。
ところが、その直前に便意を催します。
トイレに入ると、トイレットペーパーがありません。
近所のコンビニまで買いに行くと往復20分、用を足すのに10分。これでは最後のシミュレーションをする時間は完全に足りません。
結局、用を足すことを優先せざるをえず、プレゼンの最終確認はできないまま本番に臨み、散々な結果となってしまいました。
その後、初めて採用したスタッフが、私が別の仕事をしている合間にトイレットペーパーを買ってきてくれたことがありました。
そのとき、私は心底こう思いました。
「あのとき、この人がいてくれたら、まったく状況は変わっていただろうな」
もし、そのスタッフがトイレットペーパーを買ってきてくれたおかげでシミュレーション時間を確保でき、結果、数千万円、あるいは数億円の受注につながっていたらどうでしょう。
その場合、「トイレットペーパーを買う」という行為は、間違いなく「売上を生むための間接的な生産行為」です。
社運を賭けたシミュレーションと、トイレットペーパーを買いに行く仕事。
この2つは、まったく価値が違うように見えます。
しかし、ビジネス全体の流れを端から端まで見ている経営者からすると、「重要度」は同じ。どちらが欠けても結果は成立しません。
仕事の価値はどこで決まる?
違うのは「重要度」ではなく、「難易度」。
難しい仕事と簡単な仕事はありますが、きちんと経営されている会社なら、「重要でない仕事」は存在しません。
まず理解しておきたいのは、だからこそ、自分が雇われて給料をいただいているという事実。
あなたのやっている仕事は必ず「会社の成果を成立させる重要な役割」の一部を担っているのです。
たとえ本人が「自分はトイレットペーパーを買うことくらいしかできない」と思っていても、あなたの仕事は会社にとって欠かせない役割を果たしています。
仕事の価値は、目前の作業内容だけで決まるわけではなく、ビジネス全体でどの工程を支えているかにより決まります。
会社には「重要な仕事」しか存在しない
一見すると小さな仕事が、結果として何億円もの価値につながることは実際に起きているのです。
大切なのは、「自分がやっている仕事は最終的に何につながり、どれだけ重要か」を理解すること。
トイレットペーパーを買いに行くのは、社長がすぐにトイレを使い、本来集中すべき仕事に戻れるようにするためでした。
社長が重要な判断や仕事に集中できれば業績は伸びます。
そうなれば、社員の給料や待遇にも跳ね返り、良質な商品・サービスを届けることにもつながる。つまり、トイレットペーパーを買うという一見小さな仕事は、連なった価値の流れの一部。この「価値のつながり」を理解できるか否かが仕事の視座を大きく分けます。
会社には「重要な仕事」しか存在しない。
ただ自分の仕事の重要性を理解している人と理解していない人がいるだけです。
自分の仕事を「作業」で終わらせるか、「成果につながる役割」として捉えられるか。
その差は、才能ではなく、「目的をどこまでさかのぼって見ているか」の差にすぎません。
(本記事は書籍『地頭スイッチ』の一部を抜粋・編集したものです)








