手打ちの生蕎麦写真はイメージです Photo:PIXTA

「そば職人になるには10年」――そんな常識を、人気チェーン「ゆで太郎」は覆した。職人の技をそのまま受け継ぐのではなく、徹底的に「分解」し、誰でも再現できる「仕組み」に変えたのだ。場合によっては、10年かかる技術をわずか1カ月で身につけられるという。22年連続黒字、200店舗を支える「職人に頼らない」驚きの仕組みとは。※本稿は、株式会社ゆで太郎システム代表取締役の池田智昭『ゆで太郎の儲かる仕組み 22年連続黒字を支えるがっちり経営術』(ワニブックス)の一部を抜粋・編集したものです。

チェーン展開のカギは
「職人技」に頼らないこと

 町のそば屋と私たちの一番大きな違いは、職人との向き合い方です。

 既存のそば屋とゆで太郎では、そばを作る工程の組み立てが大きく異なります。決定的に違うのは、1人の職人が最初から最後まで作るのではなく、職人の技術を仕組みにしていることです。

 私たちは、「職人に依存しない店」を目指してきました。もちろん、一流の職人が打ったそばは美味しい。店ごとの個性も生まれます。しかし、その技術を1人に依存してしまえば、チェーン店として何百店舗も展開することはできません。

 町のそば屋が一軒で商売をしているのは、一軒に1人の職人が必要だからです。私たちの課題は、その職人技をどう再現するかでした。

 その結果として生まれたのが、「専門家を育てる仕組み」です。実は、ゆで太郎にも「製麺職人」という社内資格があります。製麺技術を身につけた従業員には、「製麺職人」のバッジが与えられます。

 製麺だけではありません。天ぷらを上手に揚げられる。麺をきれいに茹でられる。丼を美しく盛り付けられる。丁寧な接客ができる。

 こうした店舗運営に必要な技術を5つに分類し、それぞれ認定制度を設けています。そして5つすべてを習得すると、「マイスターバッジ」が授与されます。

図 毎日、打ちたてのそばを提供している。毎日、打ちたてのそばを提供している。 同書より転載

 パートさんでも製麺はできます。一定期間、経験者が付き添って教え、1人でできるようになれば認定する。そうやって専門家を育てています。

技術を分解することで
育成速度を上げる

 ただ、私たちは「職人」という言葉を少し違う意味で考えています。職人というと、1つの技術を極めた人という印象があります。しかし、ゆで太郎で育てたいのは、1つだけできる人ではありません。

 製麺もできる。天ぷらも揚げられる。接客もできる。店舗運営に必要な技術を一通り身につけ、新しく入った人にも教えられる。

 そんな専門家です。

 昔ながらの職人の世界では、一人前になるまで10年かかると言われます。寿司なら魚を見極め、切り方を覚え、シャリを炊き、握りを覚える。

 和食でも中華でも洋食でも、一人前になるには長い修業が必要です。

 でも、チェーン店はその考え方では成り立ちません。私がチェーンビジネスに可能性を感じたのは、そこでした。チェーン店は、スペシャルな職人しか作れない料理を提供する場所ではありません。良質な食事を、誰でも、手頃な価格で、同じ品質で食べることができる。それがチェーン店の役割です。

 だから必要なのは、10年かかる技術を否定することではありません。10年かかる技術を、半年、場合によっては1カ月で身につけられるように分解することです。