Photo:PIXTA
この6月、高齢などの理由で手術や化学放射線療法(CRT:抗がん剤+放射線による治療)の対象ではない食道がん患者を適応とする腫瘍溶解ウイルス製剤の「テロメライシン注(一般名:スラタデノツレブ/オンコリスバイオファーマ)」が承認された。
腫瘍溶解ウイルス製剤としては、脳腫瘍に対する「デリタクト注(一般名:テセルパツレブ/第一三共)」に次いで国内2番目の承認となる。
腫瘍溶解ウイルス療法は、がん細胞でのみ増殖するよう改変したウイルスを、がん細胞に感染させてウイルスの直接的な殺細胞作用を利用する方法だ。自前の免疫応答も発動するので免疫療法の側面も持ち合わせている。
テロメライシン注承認の根拠となった国内第II相試験は、手術およびCRT不適患者、37症例を対象に放射線療法との併用で行われた。患者は6週間の放射線治療を月~金曜まで毎日受ける一方、2週間おきに3回、テロメライシン注を食道がんに直接、投与された。
投与といっても点滴で時間をかけて注入するのではなく、がん細胞の数カ所に少量ずつ分けて合計1mLを内視鏡経由で注射する程度。ようは、がん細胞が感染してくれればいいわけだ。
その結果、治療開始6カ月後の完全寛解率(内視鏡検査や生検でがん細胞が見つからない状態)はおよそ42%、18カ月後は50%、これに部分寛解を加えると64%で寛解が得られている。放射線療法単独での寛解率は20~30%とされており、テロメライシン注の上乗せ効果が証明された。
副作用としては、投与後~24時間以内に38度ほどの発熱を伴う風邪のような症状が一過性に生じるが、2、3日で平熱にもどる。
肝心の生存率だが、テロメライシン注での寛解率が50%を超えた例では、治療1年半後も全例が生存し、長期生存を期待できる結果だった。
食道がんの発症要因は喫煙および飲酒だ。新患の7割は男性で、50代から徐々に増加し70代でピークを迎える。高齢になるほど手術も難しくなるので、新しい治療手段が出てきたとはいえ早期発見に越したことはない。胃の検診では内視鏡検査を選び、ついでに食道もみてもらおう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)







