『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク
三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。第12回では「働くことの正しい意味」について解説する。
その仕事は、誰のため?
自分の信念のために、会社の利益を犠牲にしてしまったと悩む転職代理人・井野真々子に対して、元同僚の桜木建二は、諭すように言います。
「会社の利益のために働くんじゃない。自分個人の満足感を得るためだけに働く。これが働くということの正しい意味……。前にも言ったはずだ。他人のためではない、自分のためだから真剣になれるんだと」
これはあくまで、桜木が考える仕事の「正しい意味」であって、万人に当てはまるものではないと思います。仕事に対する姿勢や、働き方を巡る認識は人それぞれです。どこにも正解はないので、自分なりに考え続けるしかありません。
一方で、「自分の信念や私情はすべて捨てて、ただ会社の利益最大化に貢献するべき」というのも、それはそれで極端です。人間は感情的な生き物なので、そう簡単に、ビジネスのためだからとすべてを割り切ることはできません。
理想的なのは、「自分のためにやっていることが、結果的に会社のためにもなる」「会社のビジネスへの貢献が、最終的に自分のためにもなっている」という状態です。
原則として、会社は会社、自分は自分なので、必ずしも利益は合致しません。組織に所属して毎月給料をもらっている以上、私情を捨てて会社のビジネスのために全力で貢献すべきだ、と主張する人もいるでしょう。
その言い分を否定するつもりはありません。正解は、どこにもないからです。
ただ、私が思うのは、「自分を殺して会社のために尽くすだけだと、いずれ社畜になってしまう」ということです。
面白くない仕事に、全力は尽くせない
仕事なんだから、黙ってやれよ。
給料をもらっているんだから、責任を果たせ。
そう主張する人がいるのも理解できます。私自身も、そう考えていた時期がありました。仕事が最優先で、自分のことは二の次だろうと。今思うと、完全に社畜の思考回路でした。
「お金のため」
「会社のビジネスのため」
「出世のため」
そう割り切って仕事をすることは、不可能ではないです。
ただし、それは短期に限ります。
5年、10年、20年という長期で考えたときに、「本当は嫌だけど、お金のために仕方なくやっている」という仕事は、そう長くは続けられません。いずれは我慢の限界が来て、辞めたくなってしまいます。
もう一度、言います。
人間は、感情的な生き物なんです。そこからは誰も逃れられません。
「この仕事が好き。毎日楽しい。だから、会社のビジネスに貢献することが、同時に自分自身の満足にもつながっている」
「今の仕事の経験は、きっと自分の将来につながっている。だから、会社のために頑張ることが、周り回って未来の自分のためにもなっている」
そういう状態が理想です。
会社のために自分の心身を犠牲にするのでもなく、自己満足のために会社の利益を無視するのでもなく、会社と自分がWin-Winになれるような良好な関係性を築けるのが一番良い形です。
この話は、単なる綺麗ごとのように聞こえるかもしれません。「仕事なんて所詮はお金を稼ぐ手段に過ぎないだろ」と言いたくなる人がいるのも理解できます。
それを理解したうえで、私はあえて言いたいです。
会社と自分がWin-Winになれる、そういう理想的な仕事を「天職」と呼び、いつの日か「天職」に出会うための具体的な手段が「転職」なのだと。
そうでなければ、会社のために自分を殺す「社畜」という生き方しか、私たちには残されていないのだから。
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク







