【マンガ】転職先選びの鉄則「美人薄命」→この意味わかりますか?『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク

三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。第10回では「大企業勤務のワナ」について解説する。

「とにかくトップ企業に入ればいい」って本当?

 転職代理人・海老沢康生は、企業選びの際の法則として「美人薄命」という例えを挙げます。彼の下で働く新人・井野真々子は、その言葉の意味を考え続けています。そして、数日後、この言葉の裏に隠された意図とは何なのか、同僚の田口僚太に相談します。

 田口はすぐにピンと来たようで、就職人気ランキングトップ20に入るような「見栄えの良い企業」= 美人は実は要注意だと、警鐘を鳴らします。

「トップランキングに入る会社はその時が最盛期で、あとは落ち目なことが多い」

「今はよくても、先はわからないってこと?」

「そのとおり。(中略)最良の企業に入社したと喜んでも、10年後、20年後、会社の業績悪化の苦労を背負いこむことになりかねない。つまり、美人に騙されるな。突然命を落とすこともあるという意味です」

「なるほど…」

 二人の会話が示す通り、「とにかくトップ企業に入ればいい」「大手有名企業に入社すれば安泰」とはけっして言い切れないのが、今の時代のキャリア構築の難しいところです。

 もちろん、大手企業に就職すること自体にはメリットはたくさんあります。ただし、「入社さえすれば将来安泰」と考えるのは難しくなってきています。

その会社は、定年退職の日まで「持つ」のか?

 特に恐ろしいのが、「企業経営の安定」と「従業員の雇用の安定」は別物だということです。特に注意したいのが、「企業経営の安定」と「従業員一人ひとりの雇用の安定」は、必ずしもイコールではないということです。

 企業が赤字に転落して、その損失を埋めようとするとき、代表的な手段の一つがリストラです。人件費は企業にとって深刻なコストの一つです。勤続年数の長いベテラン社員を人員削減の対象とすれば、コスト削減効果は非常に大きいからです。

 つまり、企業は経営を長期的に安定させるために有効な手段の一つとして、人員整理を行います。「ウチの会社は大手で儲かっているから安心」なんて悠長に構えていると、いつか痛い目に遭うでしょう。

 大手有名企業で、経営が安定していても、従業員一人ひとりにとっては解雇リスクが一生ついて回るということです。実際、近年は大手企業でも大規模な早期・希望退職募集が相次いでいます。

 近年も、大手メーカーなどを中心に、早期希望退職プログラムの実施や、大規模工場閉鎖に伴う人員適性化施策が進められています。

 先ほど、「企業が赤字に転落して……」とセオリーを述べました。

 しかし、実は、ここ数年見られる傾向として顕著なのは、「業績が赤字に陥った企業だけでなく、黒字企業も、大規模な早期希望退職募集に踏み切る」ケースです。東京商工リサーチによれば、2025年度に早期・希望退職を募集した上場企業46社のうち、約7割にあたる32社が直近決算で黒字でした。

 将来の事業転換や社内人員の年齢構成の見直しなどを目的に、黒字のうちから人員削減に動く、いわゆる「黒字リストラ」です。

 今の時代は、「大企業でも経営が傾いたらリストラの可能性がある」というだけでなく、「経営が黒字であってもリストラの可能性がある」という混沌とした状況になってきています。

「ウチの会社は大手で儲かっているから安心」ではなく、「大手で儲かっていても、長期の経営改革の一環としてリストラをする」というのが現実なのです。

 個人のキャリア構築において「大企業勤務だから安泰」というのは、もうほとんど通用しなくなってしまいました。

早期希望退職で、「手を挙げる」側になれるか

 そして、このような大規模な人員削減に際して、最近目立つのが「早期希望退職の募集枠を上回る数の応募があった」と報じられるケースです。

 企業側としては、条件に該当する社員を一定数まで辞めさせたいわけですが、その想定以上に「辞めたいです」と手を挙げる社員がたくさんいたという結果です。

 その中には、「もう十分お金はあるから、このままダラダラと定年まで働くよりも、いま退職金を多めにもらってスパッと辞めた方が得だ」という人もいれば、「もともと他社への転職も検討していたので、退職交渉なしでスムーズに辞めさせてもらえるなら逆に有難い」という人もいるでしょう。

 もちろん、前向きに辞めるケースだけではなく、「事業所の閉鎖に伴い、この会社に残るなら遠方への転勤は避けられないと言われた。これじゃあ、もう退職せざるを得ない……」という人や、「この会社にあまり未来はなさそうだし、退職金を割り増しで出してくれるうちに抜け出した方が良さそうだ」という人もいることでしょう。

 いずれにしても、個人として重要なのは、いざ会社が大量リストラに踏み切ると発表したときに、「自分は他の仕事でも食べていける」「この会社以外でも余裕で生き残れる」という強い確信をもって、自ら「手を挙げる」側になれるかの問題です。

 大手企業の看板だけに頼るのではなく、その看板も自分の糧にする。そんな力を持つことが、大手企業に長く勤めるうえでますます重要になってくるのかもしれません。

『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
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