「会社を辞めてから転職活動してもいい?」→転職アドバイザーの答えが正論すぎて、ぐうの音も出ない【マンガ】『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク

三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。第8回は「会社を辞めてから転職活動してもいいか」について考える。

転職は、とても面倒くさい

 新人の転職代理人・井野真々子は、「転職はものすごくエネルギーを使うから」「疲れ果てて途中であきらめてしまう人がとても多いんです」と語ります。そして、転職は面倒くさいと残念そうな顔で言います。

 たいていの人にとって、転職活動とは非常に面倒くさいプロセスです。どんな転職先が良いか見極めるためには、業界研究や企業研究が必須です。理想の職場を探すためには転職エージェントの助けが必要ですが、まず、どこの転職エージェントに登録すべきかから考える必要があります。

 転職エージェントに登録後は、面談の日程調整をして、希望などを伝えたうえで、次は応募するための書類を作成しないといけません。ほとんどの人は、学生の時の就職活動以来、過去の経歴や自己PRをまとめた書類なんて書くことはないので、最初はうまく書けないことが多いです。

 そうやって四苦八苦して何とか書類を仕上げたら、今度は企業の面接対策をしないといけません。事前準備ゼロで面接に行って内定をもらえる人はほとんどいないので、準備は必須ですが、働きながら転職活動をしていると圧倒的に時間が足りず、後手後手に回ってしまいます。

 転職活動に専念するための時間が足りなくて、なかなか転職先が決まらない…。

 転職先が決まらないから、ますます疲弊してしまい、やる気がなくなっていく…。

 そういう悪循環に陥ってしまう人も少なくありません。作中で井野が言っている通り、「もうダメだ」と途中であきらめてしまう人もたくさんいます。

「転職活動のために、会社を辞める」は有効か?

 このとき、「現実的に、今の仕事を続けながら転職活動を進めるのは不可能だから、とりあえず会社を辞めよう」と早々に退職届を出そうとする人もいます。転職活動のプロセスがあまりにも面倒くさくて、精神的に参ってしまうと、(1)途中であきらめる、(2)先に会社を辞める、というやや極端な二択に陥りがちです。

 しんどい、もう辞めたい、と思ってしまう気持ちは分からないでもないのですが、早々に退職を決断するのは、かなりの悪手だと言わざるを得ません。次の仕事が決まる前に会社を辞める――。つまり、無職の状態になった時点で、転職活動の成功率はガクっと下がってしまうからです。

 残念ながら、転職市場において「現在無職の人」は不利になりがちです。

 何らかの仕事をしていて、実務経験があるという前提で雇うのが中途採用の基本です。そのため、無職の応募者を積極的に採用する企業はかなり稀でしょう。

 もちろん、心身に不調が続いていたり、適応障害などで治療や休養が必要な状態であれば、無理に働き続ける必要はありません。たとえ診断がおりていなくても、いったん無職になってでも休養を取るべきケースもあるでしょう。なんと言っても健康第一です。

 ただし、今後のキャリアを考えると、「何とか耐えられるレベルであれば、できる限り次が決まる前には辞めない方がいい」という意識は持っておくべきです。

退職して短期集中すれば、内定が出る?

 中には、「会社を辞めると言っても、離職が短期間であればそんなに大きな問題はないだろう」と考える人もいます。もっと楽天的に、「有休消化期間中の1カ月以内に転職活動を終わらせてしまえばいい」という発想の人もいます。

 しかし、現代の転職市場はそんなに甘くはありません。

 大手転職サービスでは、「平均的な転職活動期間は2~3カ月」と謳っているところが多いです。しかし、それはあくまで「転職が決まった人」の平均値です。その裏側には、表面的な数字には出てこない、「途中であきらめてフェードアウトした人」「内定が出なくて連絡が途絶えた人」の屍が無数に横たわっています。 

「転職活動は2~3カ月もあれば大丈夫」と安易に考えてしまうと、生存者バイアスの罠にハマります。そう簡単に、自分が思い描いた通りに理想的な転職先が見つかるとは思わない方が良いです。たいていの場合、転職活動は当初想定よりも長期化・難化するものです。

 転職活動は、本当に面倒くさいです。「できることなら、やりたくない」というのが多くの人の本音でしょう。しかし、裏を返せば、それだけ面倒くさくて大変なプロセスだからこそ、途中で白旗を上げて降参する人が大量にいます。面倒くさくても、辛くても、最後までやり抜いた人だけが理想の職場を手に入れることができます。

 短期集中でパパっと内定を獲ろうなんて安易な考えではなく、長期でじっくり理想を追い求める姿勢の方が、最終的に得られる成果は大きくなるでしょう。

『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
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