「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。
そんな木下氏が考える「経験値は高いのに新しい職場でパッとしない人の特徴」とは? ライターの照宮氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

経験値は高いのに新しい職場でパッとしない人の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

小さな出版社で得たもの

経理として働いていた出版社は、小さな会社だった。
編集長との距離も近く、深夜まで作業している背中を何度も見てきた。
本が一冊出るまでどんな工程があるのか。社員数が少ない分、現場の空気感がすぐそこにあった。

ライターになってからは企業からの依頼もあったが、最近では出版社とのやりとりがメインになってきた。
編集の経験もなく、ライティングも体系的に学んだわけでもないが、それでもどうにかやっていけているのは、あの小さな出版社で過ごした時間があったからかもしれない。

職種が変わっても「通用する人」と「通用しない人」の差

たった一人で起業し、東証プライム上場企業へ育て上げた木下勝寿氏は、著書『地頭スイッチ』の中でこう述べている。

同じ問いでも、条件が変われば答えも変わる。
これが、地頭の考え方です。(中略)
100個の因果関係がわかれば、残り900個の問いには因果関係を当てはめ、答えられる。だからこそ、未経験の問いにも対応できるのです。

――『地頭スイッチ』より

経理ではあったが、出版社での経験は着実に自分の中に蓄積されていた。
著者と編集者の間でどんなやりとりが起きるか、入稿後にどれだけの工程が残っているか。現場を横で見ていたから、ライターになったとき、何をすべきかが自然とわかった。

知識や資格がなくても、現場で積み上げた因果関係は確実に残る。
そしてそれは、まったく違う場面でも使えるものになる。

地頭の鍛え方を学ぶつもりだったのに…

ただ経験を積むだけでは足りない。その経験から何の因果関係を学んだかが、次の未知の問いへの対応力を決めていく。
それができるかどうかで、数年後に使える引き出しの中身がまるで変わってくる。
日々の経験をどう積み上げるかまで考えさせられる一冊だった。