6月にMacやiPadなどの一斉値上げに踏み切ったアップル Photo:Cheng Xin/gettyimages
米国で注目を集める
「AIインフレ抑制論」
現在、米国経済において最大の関心事となっているのが、人工知能(AI)の急速な普及がマクロ経済や金融政策に与える影響だ。とりわけ注目を集めているのが、「AIインフレ抑制論」である。AIの導入で企業の業務効率化や省力化が進んで生産性が高まれば、コストが下がり、結果としてインフレ圧力も和らぐのではないか、という考え方である。
2026年5月にFRB(米連邦準備制度理事会)議長に就任したケビン・ウォーシュ氏も、就任前に「AIが生産性を押し上げ、インフレを抑制しうる」との見方を示していた。このシナリオ通りに進めば、AIの普及は将来的な利下げに向けた強力な追い風となるはずだ。
この議論の背景には、1990年代半ばから2000年頃にかけて起きた「IT革命」の成功体験がある。当時のアラン・グリーンスパンFRB議長は、IT主導の生産性上昇(図表)に着目し、景気拡大や賃金上昇が続く中でもインフレ圧力を低く見積もっていた。結果として、米国経済は、1990年代半ばに高成長と比較的安定した物価が併存する局面を経験した。
もっとも、その後の展開は単純ではなかった。IT革命は設備投資の増加に加え、株価の急騰を通じて資産効果を生み出し、個人消費を押し上げた。その結果、最終的には景気過熱への警戒感が強まり、1999年末から2000年にかけてFRBは利上げを余儀なくされた。新技術による生産性向上の期待が、そのまま持続的な低金利を約束することにはならなかった。
現在のAIブームも同様に、将来の供給力向上への期待と、足元の需要過熱リスクの両面から見る必要がある。








