高橋尚太郎
米国では、インフレ鎮静化が進み、5月のインフレ率(PCEデフレータの前年比)は+2%台半ばまで低下した。FRB(米連邦準備制度理事会)が目標とする+2%まであと一歩である。しかしながら、FRBは3つの不確実性に直面しており、金融政策の判断は困難な状況にある。

第2次トランプ政権が始動した。トランプ氏は、1月20日の大統領就任式当日に、異例の多さとなる40超の大統領令・覚書に署名し、その内容は、移民政策、エネルギー政策、脱炭素政策の修正を中心に多岐に渡った。就任式前から周到に準備して、政策を加速させる意欲が窺える。しかしながら、最も注目が集まっていた他国への関税引き上げは実行に移されず、通商政策については目立たない印象であった。

米大統領選でハリスの勢いが続いている。ハリスは、民主党の大統領選候補者になることが決まった頃から急速に支持を拡大し、大統領選の分水嶺ともいわれた9月10日のTV討論会でも、トランプ相手に優位に進めた。ハリスの答弁は、バイデン政権の政策をなぞるものが多かったが、自身の経験や特徴などの情報を加えて説得性を高め、大きなミスなく話を進めた。また、失言や誇張表現が多いトランプの弱点を突くことにもある程度成功した。

米国では、景気が大きく落ち込まずインフレが沈静化する「ソフトランディング」達成の可能性が高まっている。インフレ率は、今春には下げ渋ったが、足元では再び低下基調にある。景気も緩やかに減速しており、需要の過熱がインフレ再燃につながる懸念は大幅に後退した。

5月14日、バイデン大統領は鉄鋼・アルミニウム製品やEVなど複数の品目に対して、中国からの輸入関税を引き上げる方針を発表した。バイデン氏は中国の過剰生産などを問題視した政策と主張するが、11月の大統領選を見据え、国内産業の保護をアピールする姿が透けて見える。これに先立って、大統領選で戦うこととなるトランプ前大統領が、政権奪取後に大幅な関税引き上げ策をとることを示唆したことへの対抗措置との見方もできる。

11月5日の米国の大統領選挙は、バイデン大統領とトランプ前大統領の対決になる公算が大きい。現職であるバイデン氏は当初から事実上の民主党候補者であるのに対し、トランプ氏は候補指名争いの山場となる3月5日のスーパーチューズデーを圧勝し、共和党の候補者指名をほぼ確定させた。両者ともに、何らかのトラブルで大統領選から離脱することなどがない限り、このまま大統領選挙に臨むこととなる。

11月15日、1年ぶりとなる米中首脳会談が実現した。昨年11月のインドネシア・バリ島でバイデン大統領と中国の習国家主席が会談した際、米中間の意思疎通を保つことで合意したが、今年の2月に中国の偵察気球を米軍が撃墜したことで関係が冷え込んだ。今回、米国でのAPEC開催という機会を捉え、夏以降に米国から主要閣僚が相次いで訪中して意思疎通に向けた取り組みを積極化させ、ようやく首脳会談の実現に至った。

米国では、国内外の不安材料となり続けてきた「債務上限問題」がようやく解決した。債務上限問題の背景には、米政府が国債発行などを通じて借金できる債務残高の上限が、法律で定められていることがある。

米国では、今年の11月8日に議会選挙が実施される。この議会選挙は、大統領選の中間年に行われるため「中間選挙」と呼ばれ、現職大統領の業績評価という位置付けにある。「現職大統領の所属政党が中間選挙で下院議席を減らしやすい」という過去の傾向を覆すことは難しく、民主党は少なくとも下院で敗北する可能性が高い。
