
「フェルさん、新型リーフで宮崎まで走ってみませんか?」日産広報・伊藤氏のにこやかな挑発から始まった、片道1320kmの検証ドライブ。「残量はあと5%まで引っ張ってから充電するのが一番効率的です」。日産エンジニアの理論は正しい。だが深夜の豪雨の中、見知らぬ一般道でメーターの数字がジリジリ減っていくのを見る恐怖に、正論は何の役にも立たなかった。新型リーフで宮崎まで1320km。台風という悪条件のロングドライブで判明した、EVの真の課題とは?(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)
みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週も明るく楽しくヨタ話から……といきたいところですが、今週から「諸般の事情」により、ヨタ話は本編後の掲載となります。皆さま、ヨタだけでなく本編も読んでくださいね(はぁと)。
「フェルさん、宮崎まで走ってみませんか?」日産広報の挑発
事の発端は、日産自動車広報部の伊藤氏による「挑発」だった。新型リーフの開発者インタビューの帰り際のことだ。
「フェルさん。新型リーフで宮崎のフェル邸まで走ってみませんか?」
彼はにこやかに、しかし眼の奥は一切笑わずにそう言った。
日産自動車のEV「リーフ」。初代は2011年登場、日本の電気自動車の先駆けである(広報写真)
先月、私は新型リーフの素性の良さを高く評価する原稿を書いた。3代目のリーフは、もはや「EVだから」という言い訳を必要としない、極めて完成度の高い「フツウのクルマ」に仕上がっていた。
しかし、都内の整った道を数時間走っただけで、本当の実力が理解できるのか。EVとしての素性が分かるのか。
「近場の道をチョロっと走っただけでリーフを分かった顔をされても困るんですよね。このクルマの真価は、充電を繰り返して骨の髄まで疲労が染み渡るロングドライブにこそあるんですよ」
伊藤氏の言葉を、私はこのように解釈した。
やりますか、ロングドライブ。東京→宮崎、めちゃくちゃ遠いけど。
検証ルートは片道1320km、参勤交代のような長旅へ
本来の検証ルートは、世田谷の自宅から宮崎フェル邸までの約1320kmである。ただし車両の受け渡しは横浜の日産グローバル本社。距離はほとんど変わらない。
いくら最新のEVとはいえ、急速充電器で給電しながら本州を縦断し、更に九州の南まで下っていくなど正気の沙汰ではない。長距離トラックでもあるまいし。まるで現代の参勤交代である。下にぃ~下にぃ~。
かくして不肖フェル。日産グローバル本社で朝9時に車両を借り受け、9時半に横浜を出発した。初日の目的地は関門海峡手前の壇ノ浦PAにあるハイウェイホテル。およそ1000km弱。ゆっくり走っても9時過ぎには着くだろう。ここで一泊し、翌日早朝に宮崎を目指す計画である。
日産グローバル本社出発時点の充電状態は99%、走行可能距離517km Photo by Ferdinand Yamaguch
1320kmの長距離でも崩れなかった「フツウのクルマ」の完成度
と、その前に。今回の原稿は、新型リーフのファーストインプレッションではない。クルマそのものの基本的な評価は、すでに済ませている(参考記事)。
今回確かめたかったのは、短時間の試乗で感じた完成度が、1320kmという現実の長距離移動でも揺るがないのか、ということだ。
結論から言えば、前回感じた新型リーフの良さは、長距離でも崩れなかった。
このクルマは、どこまでも滑らかで、静かで、フラットである。右足に対する反応は自然で、加速も減速も滑らかだ。一方でガンと踏み込めばそれなりにドカンと出る、適度な「ドッカン加速感」もしっかりと残してある。
高速域での安定感も高く、長距離を走っている間に「いま俺はEVに乗っているのだ」という“特別な意識”は次第に薄れていく。
長距離ドライブでも疲れない。SUV寄りのデザインになった3代目リーフ Photo by F.Y.
手放しOK!ほぼ自動運転、プロパイロット2.0の実力
長距離を走るクルマに必要なのは、派手な刺激ではない。
退屈しないことより、疲れないこと。この方がはるかに大切だ。
そういう意味で新型リーフは実に優秀だった。
シートも良い。いい年のオッサンが長時間座り続けても、腰や背中が悲鳴を上げない。骨盤をしっかり支え、路面からの細かな振動をいなしてくれる。首都高周回の試乗で感じた上質さは、東名、新東名、山陽道と高速道路を走り続けても、メッキが剥がれることはなかった。
そして長距離でとりわけ効いたのがプロパイロット2.0である。
高速道路の本線でシステムが作動すると、リーフは車線を維持し、前走車との車間を滑らかに保つ。手放し足放しもOKの「ほぼ自動運転」だ。
無論ドライバーには常時監視義務があり、ボサッとスマホを触ったりする“ながら運転”はご法度だが、この仕上がりは素晴らしい。高速での移動距離が伸びれば伸びるほど、そのありがたみが身に沁みてくる。その疲労軽減効果は絶大である。
条件さえ揃えば、完全手放し足放しの「ほぼ自動運転」が可能。ハンドルを持つ手を放しても、クルマがピーピー警告することもない。これなら楽勝!と思いきや…… Photo by F.Y.
「なんだ。EVの長距離移動なんて楽勝じゃないか」
しかし。だがしかし。私の慢心はこの後、ものの見事に打ち砕かれることになるのである。







