「最近、物忘れが増えた気がする」。そう感じたとき、多くの人は加齢や睡眠不足を疑う。しかし認知機能を蝕む大きな原因は、一見、脳とは無関係に思える、ある身体の変化にもある。医師で老年医学の専門家であるガブリエル・ライオンの知見をもとに、深刻な認知機能の低下を招きかねない意外な習慣を紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

「認知症」になりたくなかったら今すぐやめるべき習慣・ワースト1Photo: Adobe Stock

肥満と脳の明らかな関係

「物忘れが増えた」「新しい情報が頭に入りにくい」。こうした記憶力や認知機能の低下を自覚したとき、多くの人は加齢や睡眠不足を疑う。

 しかし脳機能を内側から蝕んでいる大きな一因は、脳とは無関係だと思われがちな、ある日常的な生活習慣の怠慢にある。

 犯人は、「肥満を放置すること」だ。

 私たちは多くの場合、おなかまわりについた脂肪を外見上の問題として捉えてしまいがちだ。しかし、医師で老年医学の専門家であるガブリエル・ライオンが書いた『筋肉が全て』は、肥満が脳に悪影響を与えいているという衝撃の事実を突きつける。

 過体重や肥満が記憶力に悪影響を与えることは以前から知られている。過剰な脂肪組織と脳の容積の低下に関連があることは、これまでの多くの研究から明らかだ。

 さらに新たな証拠によって、脳の容積に影響があるだけでなく、脳の構造が実際に破壊されることも明らかになった。――『筋肉が全て』より

 著者がかつて臨床研究の現場で直接目にした事実は、私たちが考えている以上に早い段階から、この脂肪蓄積による脳への悪影響が始まっていることを示している。

 セントルイス・ワシントン大学医学部で研修生として肥満の医学を研究していたとき、私は過剰な脂肪と脳疾患の関係を目撃した。
 40代の人びとの脳をスキャンしたところ、ウエストが太い人ほど脳の容積が小さいことがわかったのだ。――同書より

 働き盛りである40代の時点で、ウエストの太さはすでに脳の物理的な大きさに反映されているという。

どうすれば防げるのか?

 この状態を放置して年齢を重ねることは、将来、深刻な認知機能障害を招く大きなリスクを抱え込むことを意味する。

 6583人の腹部直径を長期にわたって測定したある縦断的研究では、腹部直径が最も大きい観察対象者は最小の参加者に比べて認知症を発症するリスクがほぼ3倍高いことが明らかになった。
 体重過多は、それだけで記憶障害のリスクを大きく高めることが判明したのだ。――同書より

 なぜ、肥満がこれほどまでに脳の認知機能と連動するのだろうか。

 同書によれば、過剰な体脂肪が蓄積して代謝のバランスが崩れると、脳でもインスリン抵抗性が生じる。この状態は、情報処理や記憶、衝動の抑制といった認知機能の低下につながるという。

 記憶力をクリアに保ち、将来の認知障害を防ぐために必要なのは、脂肪を蓄積させないことだ。

 良質なタンパク質を中心とした栄養摂取と日常的な運動によって代謝バランスを整え、自らの代謝を司る筋肉に目を向けながらウエストサイズをコントロールする。

 その積み重ねこそが、人生の後半戦においても明晰な頭脳を守る本質的な防衛策なのである。

(本記事は、ガブリエル・ライオン著『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』に関連した書き下ろし記事です)

ガブリエル・ライオン(Dr. Gabrielle Lyon)
医師(DO)
イリノイ大学で栄養科学の学部課程を修了後、セントルイス・ワシントン大学において老年医学・栄養科学の臨床・研究フェローシップを修了。健康、パフォーマンス、老化、疾病予防におけるタンパク質の種類および摂取量の実践的応用に関する分野の専門家、教育者として活躍している。筋肉についての最新研究を網羅した本書は全米で大きな話題を呼び、ニューヨーク・タイムズベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、世界各国での刊行が続いている。