定年後こそ人生を楽しむ時間だと考えている人は多い。しかし老後に振り返ったとき、「あのときもっとこうしていれば……」と後悔する人も少なくない。ではそんな人には、どんな共通点があるのだろうか。医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオンの知見から、人生後半の満足度を大きく左右する要因について紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

【第二の人生が台無し】老後「失敗した」と後悔すること・ワースト1Photo: Adobe Stock

夢の「第二の人生」は本当に実現するか?

 定年退職を迎えたら、これまでの仕事のプレッシャーや人間関係から解放され、旅行や趣味を存分に楽しむ。そんな自由で豊かな「第二の人生」を思い描いている人は多いだろう。

 しかし老後に振り返ったとき、「あのときもっとこうしていればよかった」と後悔する人も少なくない。では、多くの人が人生の終盤になって悔やむこととは何だろうか。

 それは、若いときに健康、とくに身体づくりを軽視したことだ。医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオン著『筋肉が全て』によれば、私たちが充実した人生を送れるかどうかは、健康な「筋肉」を維持しているかどうかにかかっている。筋肉は単に体を動かすためのパーツではなく、代謝を整え、あらゆる病気から身を守る強力な臓器だからだ。

 多くの人は、年を取って体力が落ちるのを「加齢のせいだから仕方ない」と諦めてしまうが、著者は次のように警鐘を鳴らしている。

 およそ50歳を過ぎると、筋肉量は毎年1~2%の割合で減少する。
 多くの場合、失われた筋肉は体脂肪に置き換わり、筋力と可動性が低下し、同時に代謝も乱れる。
 筋力の低下はさらに顕著だ。運動量の低下、質の悪い栄養、ホルモンの減少、ケガ、炎症などが嵐のように降りかかるのが原因だ。
 だが嵐と違って、それぞれの要素に働きかけて影響を緩和することができる。タンパク質を多く含む食事をして筋力トレーニングに励めば、筋肉量と筋力の低下は防げる。――同書より

 定年を前にした50代の時点で、筋肉の崩壊はすでに顕著に進行しているというのだ。

動かなければ、筋肉がどんどん落ちていく

 さらに恐ろしいのは、定年後、通勤がなくなり、家の中で過ごす時間が増えることによる「不活動」のダメージだ。

 動くのをやめると筋肉は収縮し始める。
 高齢者が7日間ベッドの上で過ごしただけで脚の筋肉組織が約3%減少したという調査結果がある。
 そんなのは自分と関係のない話だと思うかもしれないが、ちょっと運動をしなくなっただけでも筋肉組織が大幅に減るリスクがある。――同書より

「今日は疲れたから」「どこにも出かける予定がないから」と動かない生活を続けていると、筋肉はあっという間に失われてしまう。

 筋肉が減少すれば、ちょっとしたつまずきで転倒し、そのまま寝たきりになってしまうリスクも高まる。

 どんなに立派な老後の計画を立てていても、自分の足で歩き、自由に動ける身体がなければ、好きなことをして人生を楽しむことは決してできないのである。

 しかし、希望はある。

「筋肉は何歳になっても自分の意思でコントロールし、鍛え直すことができる唯一の臓器」だからだ。

 良質なタンパク質をしっかり摂り、筋力トレーニングを行えば、加齢に抗って筋肉の減少を食い止め、活力を取り戻すことができる。

 定年後の人生の満足を決めるのは、「今日、あなたが筋肉を動かしたかどうか」である。いつまでも自由で楽しい人生を謳歌するために、つまらない老後を迎えないために、いますぐ立ち上がり、筋肉という最強の資産への投資を始めよう。

(本記事は、ガブリエル・ライオン著『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』に関連した書き下ろし記事です)

ガブリエル・ライオン(Dr. Gabrielle Lyon)
医師(DO)
イリノイ大学で栄養科学の学部課程を修了後、セントルイス・ワシントン大学において老年医学・栄養科学の臨床・研究フェローシップを修了。健康、パフォーマンス、老化、疾病予防におけるタンパク質の種類および摂取量の実践的応用に関する分野の専門家、教育者として活躍している。筋肉についての最新研究を網羅した本書は全米で大きな話題を呼び、ニューヨーク・タイムズベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、世界各国での刊行が続いている。