つまり、収縮期血圧を140mmHg未満に抑えるよりも、120mmHg未満を目標とした方が、明確にリスクが低下していたことになります。
また、全死亡率についても同様に低下が認められ、厳格な降圧治療を受けた群では、寿命そのものの延びにつながっていました。
血圧をより厳しく下げれば、心臓病や死亡を減らせる、というメッセージは、非常にインパクトのあるものでした。SPRINT試験の結果はまたたく間に世界中に広がり、ガイドラインに影響を与えました。アメリカ心臓協会や高血圧学会は、血圧管理の基準を見直し、「より低い血圧値を目指す」方向へとシフトしました。
このようにきちんとデザインされたランダム化比較試験を行なうことで、「もしも、血圧を積極的に下げたら、通常の管理をしている場合と比べて、どの程度健康への影響が変わるか?」という因果関係に関する問いに対して、説得力を持って回答することが可能となり、結果として社会や医療現場を変えることにつながるのです。
正確な調査結果であっても
万人に当てはまるとは限らない
一方で、この結果をすべての人にそのまま適用するのは注意が必要です。たとえば、SPRINT試験において対象者の選定基準に含まれなかった糖尿病患者などにまで、「上の血圧は120未満を目指せ」とは、この試験の結果だけからは言えません。
医療の現場にこれらの知見を応用するにあたっては、研究結果をそのまま当てはめるのではなく、「誰にとって120未満を目指すべきか」を注意深く考察する必要もあるのです。
そこで私たちの国際共同研究グループは、効果の違いを検討すべく、SPRINT試験に参加した9000人以上のデータを再解析しました。
特に注目したのは「一人暮らしか、誰かと一緒に暮らしているか」という生活状況です。なぜなら、生活のなかでの支援やつながりは、薬の効果にも影響を与える可能性があるからです。
対象者は「黒人」と「黒人以外」に分けられ、さらに「一人暮らし」か「同居あり」かで4つのグループに分類されました。というのも、人種によって家族間のつながりの重要性や価値が異なることが、今までの研究から示されていたからです。







