マインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、不安に飲み込まれそうなときの「ブリージングスペース」も書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】ストレスが消えていく習慣・ベスト1Photo: Adobe Stock

不安で胸がドキドキ

――仕事で失敗したらどうしよう、人間関係がうまくいかなくなったらどうしようと、強い不安に襲われたり、時には動悸や息苦しさを感じたりすることがあります。なぜ私たちは、これほどまでに不安に振り回されてしまうのでしょうか。

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):それは脳の仕組みに関係しています。私たちの脳には、恐怖や外敵から身を守るために働く「扁桃体」という部位があります。これが過剰に反応すると、脳は自分を守るための「緊急モード」に入り、アドレナリンが分泌されて交感神経が優位になります。その結果、動悸や過呼吸といった身体症状が引き起こされるのです。いわゆるパニック発作なども、この扁桃体の過剰活動が深く関わっています。

――不安やパニックは、脳の警報システムが過敏になりすぎている状態なのですね。通常はそれをどうやって抑えているのですか?

久賀谷:本来であれば、理性を司る「前頭葉」が、上から扁桃体を抑えつけて鎮静化を図ります。しかし、強いストレスがかかり続けたり、脳が疲弊したりすると、前頭葉が扁桃体を抑えきれなくなり、脳全体が乗っ取られる「扁桃体ハイジャック」という状態に陥ってしまいます。

不安を和らげるブリージングスペース

――では、不安に押しつぶされそうになったときは、どう対処すればいいのでしょうか。

久賀谷:役立つのがマインドフルネスです。不安を感じたときは、無理に考えないようにするのではなく、「ブリージングスペース」という手法を試してみてください。まず、自分が不安に思っていることを「私は◯◯について悩んでいる」と1つの文にして、そのとき身体のどこが緊張するかを客観的に観察します。「締め切りに間に合うかどうか不安で悩んでいる」とかですね。次に、自分の「呼吸」に意識を集中させます。過去の失敗や将来の不安に向かっていた意識が、「いまここ」につなぎとめられるようにするんです。最後に、意識の向かう先を呼吸から体全体に広げます。あたかも身体全体が呼吸しているようにイメージするのがコツです。

――身体の緊張をほぐすことで、不安も和らいでいくのですか。

久賀谷:その通りです。興味深いことに、長期間マインドフルネスを実践している人の脳を観察すると、前頭葉が扁桃体を上から無理やり抑えつけるのではなく、両者がよりフラットで対等な関係になり、うまくバランスを取るようになることがわかっています。つまり、脳の構造そのものが変わり、ストレスや不安に対する「捉え方」が変わっていくのです。急な不安に悩まされている方は、ぜひ日々の習慣に取り入れてみてください。