「悩みごとが頭を巡って、夜なかなか寝つけない」――その原因は、脳の回路が夜になっても暴走していることにあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、睡眠の質を上げる4つの習慣も書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】悩みごとがみるみる消える「寝る前」の習慣・ベスト1Photo: Adobe Stock

睡眠は脳の「デトックス時間」

――脳の疲れをとるためには、やはり「睡眠」が一番重要ですか?

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):おっしゃる通りです。マインドフルネスと並んで、脳の休息において睡眠は欠かせません。睡眠というのは、脳の「洗浄」あるいは「デトックス」の時間だと言えます。

――実際に脳がきれいになるのでしょうか?

久賀谷:はい。睡眠時のマウスの脳内を観察すると、「脳脊髄液」という洗浄液がより多く取り込まれていることがわかりました。この洗浄液が、アミロイドβタンパク質という脳の疲労物質を洗い流してくれるのです。逆に言えば、睡眠が不足すると脳内にゴミが溜まり続けることになります。

――しっかり眠らないと、脳にゴミが溜まってしまうのですね。認知症との関係もあるのでしょうか。

久賀谷:実は深い関係があります。認知症の患者さんの脳を調べると、このアミロイドβタンパク質がデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の関連部位に溜まってしまっています。DMNは脳が意識的な活動をしていないときに働く回路です。DMNを長年使いすぎたために回路が耐久年数を超え、疲労物質が溜まってしまったのではないかとも考えられています。認知症を防ぐという意味でも、毎日しっかり睡眠をとることは非常に重要です。

眠れない夜こそマインドフルネスを

――とはいえ、ストレスや悩みごとがあると、夜なかなか眠れないことも多いです。

久賀谷:いろいろな考えが頭を巡って眠れないときというのは、脳内のDMNが過剰に発動している状態です。過去の失敗を悔やんだり、未来への不安を考えたりと、心が「いまここ」にない状態がDMNを暴走させ、脳を消耗させてしまっています。そんなときこそ、マインドフルネスが役立ちます。眠る前や夜中に目が覚めてしまったときには、呼吸に注意を向けてみてください。呼吸を意識することでDMNの活動が抑えられ、脳はより深く休息することができます。

悩みごとはノートに書き出して寝る

――日頃から睡眠の質を上げるためのコツはありますか?

久賀谷:まず「就寝・起床の時間を一定にして体内時計のリズムを覚え込ませる」こと。次に「交感神経を高めるカフェインなどの刺激物を就寝前に控える」こと。

「悩みごとはノートに書き出してから床につく」のも有効です。頭の中でぐるぐると考え続けるよりも、紙に書き出すことで脳が手放しやすくなります。そして「朝起きたら日光を浴びて覚醒のリズムをつくる」ことも大切です。薬物に頼る前に、まずはこうした睡眠のメカニズムに即したアプローチを試してみてください。マインドフルネスと良質な睡眠を組み合わせることで、脳の回復力は格段に高まるはずです。