「優秀なメンバーがそろっているのに、なぜかチームがまとまらない」――その原因は、能力の問題ではなく、脳の「自己へのとらわれ」にあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、エゴを手放してチームの力を最大化する脳科学的アプローチも書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】「優秀な人がいるのに成果が出ない」職場の特徴とは?Photo: Adobe Stock

エゴがチームワークを壊す?

――会社でチームをまとめる立場の人の悩みとして、「優秀な人材がそろっているはずなのにチームワークがなかなか機能しない」というものがあります。

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):優秀な人材が揃っているからこそまとまりにくい、というケースも多いんです。

個人の能力が高いと、どうしても「自分が、自分が」というエゴが前面に出やすくなります。

チームや組織を動かしていくうえでは、この個人の「自我(エゴ)」が大きな障害になることがよくあります。日本語でセルフレスネス(Selflessness)を意味する「滅私」という言葉がありますが、優秀な個人の集まりほど、この滅私の意識が欠かせないのです。

――自己主張を抑えるというのは、優秀な人ほど難しそうですね。脳科学的なアプローチにはどのようなものがありますか?

久賀谷:マインドフルネス瞑想は、脳科学的に見ると「自己へのとらわれ」を司る後帯状皮質の活性を低下させることがわかっています。

この部位の活動が抑えられると、「自分が正しい」「自分が評価されたい」というエゴが顔を出しにくくなります。

つまり、マインドフルネスは単なるリラクゼーション法ではなく、チームワークを高める脳科学的なアプローチでもあるのです。

NBAの名監督「禅マスター」に学ぶ

――マインドフルネスをチームワークに活かした具体的な事例はあるのでしょうか。

久賀谷:有名なのが、アメリカのプロバスケットボールリーグNBAの名監督フィル・ジャクソンです。

彼は「禅マスター」としても知られており、マインドフルネスをチームマネジメントに取り入れたことで知られています。

マイケル・ジョーダンがいたシカゴ・ブルズ、コービー・ブライアントがいたロサンゼルス・レイカーズを何度もタイトルに導いているんです。

――飛び抜けたスター選手たちのいるチームを見事に束ねたわけですね。

久賀谷:そうです。個人の能力が飛び抜けて高い選手たちは、自己中心的なプレーに走りやすいものです。

しかしフィル・ジャクソンは、マインドフルネスを通じてエゴを手放し、チームとして戦うことの重要性を選手たちに体得させました。

これはビジネスの世界でも同じです。

世界の一流企業がこぞってマインドフルネスを導入しているのは、社員個人のストレス軽減だけでなく、組織全体のチームワークを最大化するためでもあるのです。

個人のエゴを抑え、フラットな視点でチームに貢献できる人材を育てること。それが、最強のチームをつくる最も合理的なアプローチだと、最先端の脳科学は示しています。