「職場に苦手な人がいて、その人のことを考えるだけでどっと疲れる」――その原因は、ネガティブな感情が脳のエネルギーを浪費していることにあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、嫌いな人への感情を鎮める「メッタ(慈悲の瞑想)」の実践法も書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】職場の嫌いな人に疲弊しない方法・ベスト1Photo: Adobe Stock

ネガティブな感情が脳を疲弊させる

――職場に「どうしても好きになれない人」がいて、その人のことを考えるだけでストレスを感じてしまうようなとき、どうすればいいのでしょうか。

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):ストレスの大半は人間関係の中から生まれますからね。

嫌悪や妬み、怒りといったネガティブな感情は、脳を著しく疲労させます。

こうした感情を抱えたまま放置していると、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が過剰に働き続けます。DMNは脳が意識的な活動をしていないときに働く回路で、脳の消費エネルギーの60~80%を消費するという大食漢です。DMNが過剰に働き続ければ、脳はどんどん消耗していきます。

そんなときには、他人に対する愛情や慈しみを内面に育てる「メッタ」が効果的です。

――具体的にはどのように行うのでしょうか。

久賀谷:まず、本書でお伝えしている通常の「マインドフルネス呼吸法」を10分間続けます。

次に、ストレスの原因になっている「どうしても好きになれない人」を心にイメージし、それによって起こる身体の感覚や感情の変化に注意を向けます。

嫌いな人の幸せを祈る

――身体が緊張したり、イライラしたりしそうですが……。そういった変化を眺めるのですね。

久賀谷:そうです。そして、その人に向けて心の中で次のフレーズを唱えます。

「あなたがさまざまな危険から安全でありますように」「あなたが幸せで心安らかでありますように」「あなたが健康でありますように」と。

――嫌いな人の幸せを祈るということですか? なかなか難しそうです。

久賀谷:最初は抵抗を感じるのは当然です。

しかし、この実践を続けることで、愛情や慈しみ、共感、寛容といった感情が育まれていきます。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などでもメッタを教えるプログラムが導入されており、その効果が注目されているんですよ。

脳科学が証明するメッタの効果

――脳科学的にも効果は実証されているのでしょうか。

久賀谷:はい。メッタがDMNの関連部位である後帯状皮質の活動をリアルタイムにかなり低下させることが明らかになっています。

ネガティブな感情を打ち消し、ポジティブな感情を育成することで、脳に疲れが溜まりづらい状態をつくることができるのです。よく眠れるようになったり、ストレスが軽減して気分が良くなったりしますよ。

「嫌いな人のことを考えるだけで疲れる」という悪循環を断ち切るために、ぜひ試してみてください。