「一度イライラすると、そのことばかり頭を巡ってしまう」――その原因は、自分と「考え」を切り離せていないことにあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、感情から一歩引いて自分を眺める「メタ認知」を高める瞑想法も書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】「感情に振り回されない人」がやっている小さな習慣・ベスト1Photo: Adobe Stock

「考え」は自分ではない

――うまくいかないことがあると、ついイライラしたり落ち込んだりして、感情に振り回されてしまうことがあります。こうした心の乱れを整えることはできるのでしょうか。

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):人間は、自分が抱いている「考え」や「感情」を、自分自身だと同一視してしまいがちです。自分が怒っていれば「私は怒りそのものだ」と感じ、くよくよ悩んでいれば「私はダメな人間だ」と思い込んでしまいます。しかし、本来「自分」というのは、そうした考えを受け入れる「容れ物」にすぎません。

――自分と感情は別物だと考えるのですね。

久賀谷:ええ。心に余裕がある人は、自分と考え・感情を同一視していないのです。

自分自身の思考や感情を超越して、全体を客観的に俯瞰する能力のことを「メタ認知」と呼びます。マインドフルネスを実践することで、このメタ認知の力が高まることがわかっています。

たとえば、怒りを感じた瞬間に「あ、いま自分は怒っているな」と一歩引いて気づくことができれば、それだけで感情に飲み込まれずに済みます。

駅のプラットホームに、電車がやってくるのをただ眺めていることをイメージしてください。電車の中に乗っているのは「考え」です。

次から次へと電車はやってきますが、あなたはホームにそのまま留まります。駅と電車を同一視するのはバカげていますよね?

考えに対して傍観者でいることが重要です。本書ではこうしたイメージを使ったマインドフルネス瞑想を紹介しています。

トップアスリートに学ぶ「鳥の目」

――客観視できるようになると、どう変わるのでしょうか?

久賀谷:たとえばトップアスリートたちは、このメタ認知力が非常に高く、試合中にフィールド全体を「鳥の目」で見渡すような広い視野を持っています。

一流のサッカー選手などは、自分がプレーしながらも、まるでテレビゲームの中の自分を上空から操作しているような感覚で状況を俯瞰していると言われます。

これはスポーツに限った話ではありません。仕事での交渉や、家族との話し合いの場などでも同じです。感情的になりそうな瞬間に、自分自身を一歩引いた場所から眺める視点を持てれば、落ち着いて対処ができますよね。

脳のエネルギー消費の面から見ても、客観的になれるかどうかは重要です。イライラする出来事があっても「あ、いま怒っているな」と一歩引いて自分を観察することで、イライラのループから抜け出し、脳のエネルギー浪費を防ぐことができるのです。マインドフルネスを実践することで、誰でもこの「鳥の目」を持てるようになります。