シリーズ累計32万部――日本にマインドフルネスを広めたベストセラーが、最新の脳科学の知見と実践法を加えて『世界のエリートがやっている最高の休息法[完全版]』としてパワーアップし、発売された。睡眠、集中力、ストレス、老化……幅広い領域で効果が認められる「脳の休め方」。この連載では、その発売を記念し、著者でアメリカ在住の精神科医、久賀谷亮氏にインタビューを掲載する。
(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【医師が解説】心が折れやすい人と折れない人、その決定的な違いとは?Photo: Adobe Stock

心が折れにくい人と折れやすい人の脳の違い

――仕事で大きな失敗をしたり、予期せぬトラブルに見舞われたりすると、すぐに心が折れてなかなか立ち直れなくなってしまいます。本書『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』では、こうした「心の回復力」も鍛えられると書かれていますね。

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):はい。心理学の世界では、強いストレスを受けても元に戻ろうとする心の復元力を「レジリエンス」と呼びます。

竹のようにしなやかで、簡単には折れない心のことです。最近の脳科学の研究で、このレジリエンスが高い人と低い人とでは、ストレスを受けたときの「脳内のネットワークの働き方」に違いがあることがわかっています。

――性格の問題ではなく、脳の働き方の違いなのですか?

久賀谷:ええ。一般に、強いストレスがかかると脳内では報酬を得たときに働く脳部位のドーパミン系が活性化します。

レジリエンスの高いマウスの脳を観察した研究では、このドーパミン系と脳のエネルギーを浪費する「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」の主要部位である内側前頭前野との結びつきが強化され、脳内のバランスを取り戻そうとする機構がうまく働いていることがわかりました。

この内側前頭前野は、まさに本書でお伝えしている「脳の休息法」、マインドフルネスが作用する場所です。

レジリエンスの高い脳のメカニズムは、マインドフルネスによるストレス低減の仕組みとかなり似ているんです。

――つまり、マインドフルネスを続ければ、ストレスに強い脳を自分で作れるということでしょうか?

久賀谷:その可能性が十分あります。マインドフルネスは、一時的なリラクゼーションではなく、脳の構造そのものを変える力(脳の可塑性:かそせい)を持っています。

不安を消そうとせず、受け入れる

久賀谷:本書では、とくにレジリエンスを鍛えるためのマインドフルネスとして「エクアニミティ」という実践法を紹介しています。

――どのような実践法なのか教えてください。

久賀谷:椅子に座って目を閉じ、呼吸に注意を向けたあと、自分が気になっていることや不安に思っていることをあえて心に思い描きます。

そして、その不安に対して、心の中で「世の中はそういうものだ」「どんなこともありのまま受け入れられますように」とフレーズを唱える。

これを繰り返すだけです。私たちの直面する苦難のほとんどは、「この先どうなってしまうんだろう」という将来への不安によって勝手に水増しされています。

目の前のトラブルそのものよりも、心が「いまここ」にないことがストレスを増大させているのです。

だからこそ、不安を無理に消そうとするのではなく、ありのままに受け入れ、いまここへの集中を取り戻す。この訓練を繰り返すことで、簡単には折れないしなやかな心と脳を作っていくことができるのです。