「もう少し良くしてから出そう」。そう思って資料を直し続けているのに、なかなか完成しない。それは本当に、質にこだわっているからでしょうか。『おい、とりあえず終わらせろ』の著者、nwiizo(ぬうぃぞう)氏が、仕事の進め方を変えた先輩の言葉を振り返ります。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

おい、とりあえず終わらせろPhoto: Adobe Stock

「この人は仕事を雑にやっている」と思った

 私を変えてくれた人がいます。

 新卒で入った会社のメンター、Sさん。

 彼は、私が1週間資料で悩んでいるのを見て、軽くこう言い放ったのです。

「60点でいいから出せば?」

 聞いた瞬間、心の中で大反発しました。

 こっちは真剣に悩んでるのに。「この人は仕事を雑にやっている」とすら思った。

 私は質にこだわっているのに、なぜ中途半端なものを出せと言われなきゃいけないのか、と。

 ただ、反発している間もSさんの仕事ぶりを目の前で見せつけられていました。

 とにかく完成に向かうまでの速度が速い。出す。フィードバックを受ける。直す。また出す。

 私がひとりで抱え込んでいた間に、Sさんはそのサイクルを静かに回し続けていた。

仕事ができる人は「やり方」を知っている

 あるとき、Sさんが私の資料にフィードバックをくれました。

「ここ、結論が先に来た方が読みやすいよ」

 たった一言。でもこの一言で、資料の構成が一気に変わった。

 私はそこでようやく気づいたのです。自分がやっていたのは、質へのこだわりなんかじゃなかった。

 評価されるのが怖くて自分を守っていただけだ、と。それは、若者特有の尊大な羞恥心と臆病な自尊心でした。

 自分の手元で磨き続けている間は、他者の目が入りません。一度見せたことで、自分では気づかなかった直し方が見えたのです。

 仕事ができる人が持っているのは才能ではなく、「やり方」だ。

 Sさんは、何が終わりかを決めて、小さく割って、完璧でなくても出していた。目の前の仕事をきちんと終わらせられるから「できる」のだと、Sさんから学びました。

「今回はここまで」と線を引く

「終わらせる」は判断の連続です。「ここで止める」「これで出す」「今日はここまで」。

 基準さえ持てば、誰でもできる。

 でも、「これで十分」とわかっていても、感情が「もう少し」と上書きしたがる。「始める」のは勢いでどうにかなっても、「始める」だけでは、いつまで経っても成果物を作れるようにはならないのです。

 だから、大事なのは「終わらせる」こと。

 それは「歯を食いしばって完成させろ」ということではありません。どちらかというと、「トレードオフを受け入れて、完璧を諦めろ」に近い。

 全部は無理だと認める。今回はここまでだと線を引く。

 その諦めが、次の一歩を生みます。

 見えないものに怯えるのではなく、よく見て、「ああ、こういうことか」と納得して、執着を手放す。

 そうやって「終わり」の輪郭を明らかにして、「終わった」と言える瞬間を少しだけ増やせば、仕事は進んでいくのです。