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なぜ滋養強壮ドリンクのパッケージやCMは、あえて「苦さ」を売り文句にするのか?Photo: Adobe Stock

「まずい」ことが、なぜ「効きそう」に変わるのか

「良薬は口に苦し」というキャッチコピーとともに、あえて「にがっ!」という顔をした出演者を映すCM。

 あるいはパッケージに大きく「苦味成分配合」と書かれた滋養強壮ドリンク。

 本来、飲みにくさは商品の欠点になるはずなのに、なぜかそれを堂々と売り文句にしている。そんな光景を見たことはありませんか?

 実は、この「苦さ」の強調は、味の好みを伝えるための表現ではありません。お客様の「効いている感覚」そのものを作り出すための、非常によく考えられた販促の仕掛けなのです。

「苦い=強い成分が入っている」という思い込み
(プラセボ効果)

 人は、実際の薬効成分の量や作用を直接確かめる手段を持たないまま、商品の効果を判断しなければならない場面が多くあります。そこで頼りにしてしまうのが、味や香りといった「感覚的な手がかり」です。

「苦い」「刺激が強い」という感覚は、私たちの経験の中で「何か強い成分が入っている」というイメージと結びついています。そのため、実際の薬理効果とは関係なく、苦味そのものが「効きそうだ」という期待感を生み出します。

 この期待感が、実際に体感される「効いた気がする」という感覚に影響を与える現象は「プラセボ効果」と呼ばれ、味覚のような感覚情報が、効能の実感そのものを底上げすることが知られています。

「飲みやすい」は、かえって不安を生む
(感覚と効能の連想)

 もう一つの理由は、逆の視点から見えてきます。もし滋養強壮ドリンクが「フルーツジュースのように甘くて飲みやすい」味だったらどうでしょうか。

「本当にこれで効くのだろうか」「甘いだけの飲み物なのでは」と、かえって効果への疑念を抱かせてしまう可能性があります。

 苦味や独特の風味をあえて残し、それを前面に打ち出すことは、「これは嗜好品ではなく、しっかり効く医薬品的な存在である」というシグナルを、味覚を通じてお客様に伝える役割を果たしているのです。

他の商品でも使える
「感覚を効能の証拠にする」設計

 味や刺激を「効いている証拠」として提示するこの手法は、他の商品にも応用できます。

 ・入浴剤や温感グッズ:
「じんわり温かい」「ピリッとする」といった肌感覚を強調し、パッケージにも体感が伝わる表現を大きく記載する

 ・育毛剤やスカルプケア商品:
 使用後の「スースーする清涼感」を売り文句にし、その刺激を「頭皮に成分が浸透している証拠」として印象づける

 ・のど飴や漢方系のど薬:
 あえて「独特の生薬の香り」を消さずに残し、その香りの強さを「本格的な効き目」の裏付けとしてアピールする

まとめ

 滋養強壮ドリンクが「苦さ」を売り文句にするのは、飲みにくさを我慢してもらうためではありません。

 ・「プラセボ効果に類似した心理」により、苦味という感覚そのものが「効いている」という期待感を生み出し
 ・「飲みやすさ=効果への疑念」という逆の連想を避け、あえて独特の風味を残すことで
 ・味覚という直接確かめられない領域において、感覚を「効能の証拠」として機能させている

 という、お客様自身の体感を通じて商品価値を実感してもらうための、味覚を活用した販促戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。