どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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「やめる」ボタンの手前に、
もう一つの選択肢がある理由
動画配信サービスや会員制のジム、月額制の美容サロン。
使わなくなって「そろそろ解約しよう」とサイトやアプリを開いたとき、解約ボタンを押す直前に「今なら1ヵ月休止できます」という案内が表示された経験はありませんか?
「別に嫌になったわけじゃないし、休止でもいいか」そう思って休止を選んだ結果、気づけばまた元通り利用を続けていた。
実は、この「休止プラン」の提示は、単なる引き止め施策ではありません。お客様が無意識に「今のままでいたい」と感じてしまう心理を利用した、非常に巧妙な解約防止の仕掛けなのです。
人は「変化」そのものを避けたい生き物である
(現状維持バイアス)
人間には、たとえ今の状態にさほど満足していなくても、「変化」自体を避けようとする心理的な傾向があります。これを「現状維持バイアス」といいます。
「解約する」という行為は、それまでの契約状態を完全に終わらせる、後戻りしにくい「変化」です。お客様の心の中では、無意識に「本当にやめてしまって大丈夫か」という不安が生まれ、決断にブレーキがかかります。
そこに「休止」という、変化の度合いが小さく後戻り可能な選択肢を用意されると、お客様は「やめる」という重い決断を避け、より心理的抵抗の少ない「一時停止」を選びやすくなるのです。
「解約」を「休止」と言い換えるだけで、失うものが減る
(損失回避の緩和)
もう一つの理由は、言葉が与える印象の違いです。
「解約」という言葉には、積み上げてきたポイントや会員ランク、設定した学習履歴やお気に入りリストなど、これまで積み上げてきたものを「すべて失う」というニュアンスが伴います。
一方、「休止」という言葉は、それらを「失わずに、そのまま取っておける」という安心感を与えます。同じ「今は使わない」という選択でも、「失うもの」を感じさせない言い換えが、決断へのハードルを大きく下げているのです。
他のサービスでも使える
「変化を小さく見せる」設計
この「完全にやめさせない」仕掛けは、サブスクに限らず幅広い業種で応用できます。
・フィットネスジム:
退会窓口の前に「休会制度(月額1,000円で会員権を保持)」を案内し、退会そのものを一段階手前で留める
・美容室や整体院の月額会員:
月に一度も来店がなかった月は、自動的に「ポイント消滅なしの休会扱い」とし、次回来店へのハードルを残しておく
・学習塾やオンライン教材:
退塾の相談があった際、「休会して席だけ確保する」プランを提示し、再開への心理的な戻りやすさを用意する
まとめ
サブスクサービスが解約の前に「休止プラン」を提示するのは、単にお客様を引き止めたいからではありません。
・「現状維持バイアス」により、後戻りしにくい「解約」という重い決断を避けさせ
・「休止」という言い換えにより、積み上げてきたものを失う不安(損失回避)を和らげ
・変化の度合いを小さく見せることで、お客様自身が「まだやめなくていいか」と自然に思える選択肢を用意している
という、お客様の「離脱したい気持ち」を無理に引き止めず、そっと「保留」に変えるための設計なのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
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