「この人とは、なぜかすぐに仲良くなれる」。そんな人は、話題が豊富だから距離を縮められるわけではありません。大切なのは、相手が見ているものを知り、そこから「どう思った?」と一歩踏み込むこと。人と人の距離が近づく仕組みを紹介します。本記事では、イラストレーターのヤギワタル氏の書籍『言語化だけじゃ伝わんない 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

距離をグッと近づけられる人
初対面なのに、なぜかすぐに仲良くなれる人がいます。
反対に、何度も顔を合わせているのに、いつまでも距離が縮まらない人もいます。
この違いは、どこにあるのでしょうか。
話が面白い。聞き上手。コミュニケーション能力が高い。
もちろん、そうした要素もあるでしょう。
しかし、人との距離を縮めるために、もっとシンプルにできることがあります。
それは、「相手と同じものを見ること」です。
まずは「同じもの」を見てみる
コミュニケーションというと、私たちはつい「何を話すか」を考えます。
しかし、そもそも同じものを知らなければ、話はなかなか深まりません。
それが、相手の頭の中を探る手がかりになります。
とはいえ、相手が見ているものすべてを見るのは時間的にも無理があるでしょう。
2時間の映画の話をしているときに、映画を全部観るわけにはいきません。
でも、まずは「存在を知る」ことが大事なのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
たとえば、相手が「最近、この映画が面白かった」と話していたとします。
その映画を見たことがなければ、「へえ、そうなんだ」で会話が終わってしまうかもしれません。
しかし、タイトルを覚えておく。ポスターを見る。予告編を見る。あらすじを知る。
それだけでも違います。
次に会ったときには、「あの映画って、これのこと?」と話せるからです。
すべてを知る必要はありません。
まず、「相手が見ているものの存在を知る」。
それだけで、共通の話題がひとつ生まれます。
「アレ」が通じると、距離が近づく
仲のいい人との会話を思い出してみてください。
「この前のアレ、どうなった?」
「ああ、アレね」
これだけで話が通じることがあります。
第三者が聞いたら、「アレって何?」となるでしょう。
しかし、2人にはわかる。
そこに「共通理解」があるからです。
「アレ」や「コレ」を共有している段階です。距離が近づいています。
そして、ここが大事なのですが、そのときはじめて「それについてどう思うか」を聞くことができるのです。
「どういうところに注目しているのか」と、目の付けどころを探ればいい。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここが重要です。
人との距離を縮めるには、同じものを知るだけでは足りません。
その次に、「あなたは、それをどう見ているの?」と聞くのです。
「どこが面白かった?」
「誰が好きだった?」
「なんでハマったの?」
同じものについて話していても、目の付けどころは人によって違います。
そして、その違いにこそ、その人らしさがあります。
「何が好き?」より「どこが好き?」
たとえば、同じ映画を好きな2人がいたとします。
だからといって、同じ理由で好きだとは限りません。
ストーリーが好きな人もいる。
俳優が好きな人もいる。
映像が好きな人もいる。
音楽が好きな人もいる。
「この映画が好き」という情報だけでは、その人の頭の中はまだよくわかりません。
「どこが好きなのか」まで聞くことで、少しずつ見えてきます。
映画『ターミネーター』を観た人がいたら、どう思うかを聞く。
「面白かった」と答えたら、その人の頭のネットワークでは、「ターミネーター」は「面白い」とつながっているということです。
これで、相手の頭の中をほんの少しだけ理解できるようになりました。
「いやこんな些細なこと?」と思うでしょうか。
でも、そんなちょっとしたことこそが、自分が相手に話すときの貴重な手がかりになるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
「ターミネーターが面白い」。それだけなら、些細な情報に見えます。
しかし、「何が面白かった?」と聞けば、さらにネットワークが見えてきます。
「未来から殺人マシンがやってくる設定が好き」
「シュワルツェネッガーがかっこいい」
「AIが人類を脅かす話が今見ると面白い」
答えによって、その人の興味はまったく違います。
すると次の会話も変わります。
SFが好きなら、別のSF作品の話ができる。
俳優が好きなら、出演作品の話ができる。
AIに興味があるなら、最近の生成AIの話につなげられる。
ひとつの「どう思った?」から、相手の頭の中にあるネットワークが少しずつ見えてくるのです。
「共通点」を探すより、「共通理解」をつくる
人と仲良くなる方法として、よく「共通点を探しましょう」と言われます。
出身地が同じ。趣味が同じ。好きな食べ物が同じ。
もちろん、それも会話のきっかけになります。
しかし、偶然の共通点がなくても、「共通理解」は後からつくることができます。
相手が好きなものを知る。少し見てみる。「これのことか」と存在を共有する。
そして、「どこが好きなの?」と聞いてみる。
これを繰り返せば、「アレ」「コレ」で通じるものが増えていきます。
距離が近い人とは、最初から相性がよかった人とは限りません。
同じものを見て、お互いの「目の付けどころ」を知っている人なのです。
だから、人との距離をグッと近づけたいなら、無理に面白い話をする必要はありません。
まず、相手が見ているものを知る。
そして同じものを見たうえで、「あなたは、どう思った?」と聞いてみる。
そんな些細なやり取りの積み重ねによって、2人にしかわからない「アレ」や「コレ」が増えていきます。
それこそが、人と人との距離が近づいていくということなのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




